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逸脱する編集②バックミンスター・フラー/一日一微発見351

バックミンスター・フラーは、アーティストであり、デザイナーであり、エンジニアであり、建築家であった。
思想家? いや、そんなどの肩書きをも超えた「イノベーター」だった。万能の天才というコトバは、彼にこそふさわしい。
そして、彼は僕にとっては、「編集」を全く別の力学で新生させる発明者であり、かつ不滅のブックメイカーであった。

本はリニアな構造に規定されている。ページ形式か、巻物か。ランダムアクセスにしたければ、カードにするか。
脳の機能はハイパーアクセスだから、本や編集の物理的制約を超えている。とはいえ、いや、制約があるからこそ、本や編集のアクロバティックな発明が面白いとも言えるのだが。

それにデザインということは、情報の強弱、順位や、逆に混乱を誘導することだから、精神的な強度や意識・エネルギーの流れと関係する。
僕は編集を、ベストセラーを作るような産業的なベクトルに限定したくない派だから、フラーのような、物理的・精神的な力学を構想した、巨大な逸脱者に惹かれてしまう。

彼は1895年に生まれ、1983 年に亡くなった。88歳まで生きたから、膨大な仕事を行った。

彼はある時に、自らを「モルモットB」と規定する。つまり、自分自身を自分の思想・理論の「実験動物」として、設定し直す、ということだ。自らの「ライフ」を編集し直す、ということである。

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