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私たちが「アートを通して」できること森美術館「私たちのエコロジー」/一日一微発見407

オープニングには行けなかったが、すぐに見に行った。アフターコロナ、東京オリンピックの虚栄騒ぎののあとで、このような背すじの伸びた良識ある展覧会に拍手を送りたいと思う。

しかし、「エコロジー」を問うことは、矛盾をさらけ出すことでしか進んでいけないだろう。
展覧会は「正解」を言う場所ではなくて勇気をもってさらけ出す場所であってよい。
その意味で、東京は多忙で「人ごと」にならざるをえないムードの街だ。はっきり言って、過去30年の無策が、未来に誰も期待のない国にしてしまった。
そのような「私たち」の中で、かつ森美術館という超都市的なシンボルの場所で「私たちのエコロジー」と銘うって展覧会を組織することの意味は深い。

エコロジーの問題に関しては、僕は全体を統一する「正論」などもはやない、と思っている。人類の愚かしさへの諦念もあるし、偽善ぶった「正論」を言う者への反感も正直ある。

「正論」をまとめようとするキュレーターたちの努力には敬服するものの、展覧会を見て、総論よりも個の作業に目が行くし、共感があった。発見があるので、誰もが行くべき展覧会だと思って勧めている(得るものがそれぞれ別でよい)。

僕は2つの作品が楕円の双極のように興味深かった。
1つは、レバノンのアーティストであるアリ・チェリの映像作品だ。そして、もうひとつはイアン・チェンによるAI作品。

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