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「グランド・ブダペスト・ホテル」の感想

「ダージリン急行」のウェス・アンダーソン監督の作品。「ダージリン急行」が好きで気になっていたところ、アマゾンプライムで配信されていたので観ることができた。以下ネタバレっちゃネタバレあり。

☆☆☆

その日は特にやることもなかったので、嫁と一緒になにか映画を観ようということになった。そういえばこの「グランド・ブタペスト・ホテル」が無料配信になっていたことを思い出し、なんとなしに再生ボタンを開始した。

すると開始5分で一気に惹き込まれた。惹き込まれたのはぼくだけじゃなく、隣で観ている嫁も同じようだった。物語の中で何が起こったわけじゃない。とにかく画が面白いのだ。「正面」と「パステルカラー」。どの場面で一時停止しても一枚の風景画として数分観ていられるような、そんな映像が開始から続き、一瞬でこの映画の虜になった。

また、随所に挟まれるユーモアもめちゃくちゃ好きだった。あらすじとしては、ホテルの支配人が命を狙われるというシリアスなストーリーであるものの、その中で急に挟まれるユーモアが絶妙。殺し屋が雪道をバイクで飛び出すところは特に最高だった。

映画とは物語(ストーリー)である。それは当たり前のことなんだけど、この映画においてストーリーは作品を綴じる紐でしかないように感じられた。これは決して悪い意味ではない。この映画の魅力は先に述べた通り、「画」と「ユーモア」にあると思うが、そんな一つ一つのシーンの魅力が先にある。

したがって、「伏線が回収された」とか「あのセリフの意味は」とか、そういう類のいわゆる「ストーリー」を論じるよりも、ただただ画集を一枚一枚めくるようにシーンを味わうことのほうがぼくにとっては重要だった。そしてぼくはそんな映画が大好きなんだなと改めて思わされた。

ちょっと脱線しちゃうけど、ぼくは三木聡という映画監督が好きだ。ドラマ「時効警察」や映画「亀は意外と速く泳ぐ」の監督だが、彼がインタビューでこんなことを言っていた。

「ぼくはよく『三木さんの映画は物語と関係ない小ネタが多いけど、本当は小ネタで誤魔化して物語にメッセージがあるんじゃないですか?』と言われるんだけど、全然違う。ただ小ネタやりたくて物語にしてるだけ(笑)」

これと同じことをウェス・アンダーソンにも感じてしまった。もしかしたら「いや、物語にも意味あるわ!」と怒られてしまうかもしれないが、個人的には物語があんまり重要な意味をなさない映画がめちゃくちゃ好きなのかもしれない。

「ダージリン急行」はもともと好きな映画だったが、それがなぜ好きなのか自分としても言語化できていなかった。しかしこの作品を観てようやくこの感情を整理できたような気がする。この「画」と「ユーモア」の魅力を「ストーリー」という紐で綴じる。そんな画集を一枚一枚めくるような映画がとてつもなく好みにぶっ刺さった。もしかしたら好きな洋画ベスト3位に入ったかもしれない。

93点

#今年のベスト映画

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