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#小説

ショート/歌う鳥

ショート/歌う鳥

 わたしが居るのは、いつもの森林公園。陰鬱な曇り空。並木に葉は付いていない。枯れている。落ちている。弱々しい枝がちらちらと視界に映り込む。風が冷たい。代々木公園でもセントラルパークでもない。たぶんヨーロッパのどこかだと思う。曇っているからね。といい加減なうそをつぶやく。本は読んでいない。句も詠まない。スマホも見ていない。SNSは辞めた。だれかのことも待っていない。ただぼんやりと公園のベンチに座って

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短編/あいまいもこ

短編/あいまいもこ

 まばたきするたび目が痛むと相談したくてこの場所をおとずれたはずなのに、いつのまにか別の症状を打ち明けている。
「動悸がして、息切れもします。それから注意散漫、食欲低下、不眠、なんの前触れもなく突然おとずれる………など、です」
 わたしとしてはとても真面目にそれを相談しているのに、聞いている桜井先生はだめだった。彼女のことをちらりと見ると、あはは、からかいたい、と髪の生え際から人中窩、それからにや

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短編小説/わたしはゲーム(#夜行バスに乗って)

短編小説/わたしはゲーム(#夜行バスに乗って)

「取材してもいいですか?」
 と声を掛けてきた女の人がいて、彼女も新宿行きの夜行バスを待っていた。駅前のバスターミナルで突然取材の申し込みと同時に名刺を渡される。でも、本名じゃなくてトレローニーって呼んでください、と彼女は言う。髪はぼさぼさで牛乳瓶の底みたいな分厚い眼鏡をかけている。月の光で水晶玉が…と言い出して瓶底をきらきらさせたりはしないのだけど、にやついている。不気味。
 名刺に記載された会

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短編小説/濡れ鼠

短編小説/濡れ鼠

 南口のバスターミナルで、名古屋行きの夜行バスを待っている。不運なことに傘はない。急に降り出した大粒の雨を五分ほど浴びた後、びしょ濡れの体でバスに乗り込んだ。
「寒いですね」
 と隣の席の女性に声をかけられる。雨で濡れた髪をタオルで拭きながら、「雨が降るとは思いませんでした」とため息と共にその人はいう。
「そうですね、予報では晴れだったと思います」
 そう言って、僕も長く息を吐く。
「実は今日、彼

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