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連載「イチロー部屋のイッピン」50.ホセ・ヘルナンデスのキャップ

2016年9月25日未明に、ホセ・フェルナンデスはボート事故で帰らぬ人となってしまった。この日は、イチローの3000安打達成のセレモニーの試合だった。

イチローの応援だけでは悪いと、バッターボックスに向かうすべての選手にも、大きな声で名前を叫ぶことにする。

「エチェバー-リア!」と叫ぶと、“ホッセィ”が右親指を立ててウインクをした。次の打席におしゃべりをしていると、「どうした、早くやらんか!」と右手を上下に大きく振る。次の試合開始前「面白い奴がきているぞ!」とイチローの袖を引っ張る。さすがに10試合続くと、“お友達”になったようだ。これは“ホッセィ”が、試合前の練習で使っていた汗がたっぷり浸み込んだキャップとボール、そして現千葉ロッテマリーンズのエチェバリアのボールだ。

いつも、ベンチ真ん中最前列の席を提供してくれるジェイが、「ホセは、同じくキューバから亡命したエチェバリアへの声援が、よほど嬉しかったのだろう」と教えてくれた。

ドミニカ出身のペドロ・マルチネスが、ヘルナンデスの死を知り「アメリカに亡命した人には、自由と言うことを教えなくてはいけない」と語っている。この言葉は、私の心に重く強く突き刺さった。

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