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ぼくはピート、そしてレイじいさん 第2話

第2話 「明るい空模様」

明るい空は、
ガラス風でできていて、
僕は、毎日、空を飛ぶ夢を見ている。

グリーングラス島のお祭りは、
春の月の第一風曜日。

この日は、
朝も昼も夜もなくなり、
みんなは好きなことをする。

踊ったり笑ったり歌ったり。

僕は、
ガラス風の空の中を
液体になって流れることにする。

それが
僕の
空を飛ぶ夢だ。

レイじいさんは魔法使いで、
そういうことをよく知っている。

「いい頃合い」で全てが決まる、
そういうことだ。

物事を成功させるコツ。

つまりいい頃合いを見計らえば、
空を飛べるってこと。

天気の具合、
風向き、
自分の体調、
気分、
香り。

それらが一番良い時が、
折り重なって混じり合うと
素晴らしい不思議が
体験できるのだそうだ。

僕は、
それをグリーングラス島の
お祭り日に決めた。

その日が一番
不思議が起こる日にふさわしい。

つまり
いい頃合いってこと。

そうして、
僕は、湖に向かう。

液体になって空を飛ぶには、
水のある所がいい。

僕は、
葉っぱと布と糸で作った羽根を
背中にくくりつけて、
湖めがけて走っていった。

気分は、よかった。

風向きも空気もいい。

僕は、
ぐんぐんと空を飛ぶ。

湖の上まで飛んで
液体になった。

ぐにゃりとした気分。

ゼリーの赤色と緑色。

もっと
濃くて薄い気持ち。

レイじいさんは、分かるだろうか。

レイじいさんは
笑っていた。

レイじいさんは、
太陽になっていた。

それから、
ゆっくりとハシゴを下りて、
波になった。

そして、
僕たちは、
液体のまま、ガラス風に漂った。

最高の気分。

花びらからリンゴになる感じ。

風船のピニョや
偶然草も
道端虫も分からないだろう、
この気分は。

世界が、
輪切りにされて、
くっついていくみたいなんだ。 

やがて、
夕日が下りてきて、
僕たちは、
真っ逆さまに落ちていく。

お祭り日の終わりだ。

僕たちは
壊れた羽根を引き摺って家に帰る。

もっと飛んでいたかったけれど、
レイじいさんは魔法を使わなかった。   

「こんな楽しいことに魔法は使えんよ」

楽しいことは、また来るらしい。



To be continued. 

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