見出し画像

ぼくはピート、そしてレイじいさん 第19話

第19話 「古い友人」


朝、目が覚めたら
レイじいさんがいない。

書き置きには
「ハウバートの所へ行ってくる」
とだけ。

ハウバートさんは
レイじいさんの古い友達で
島の反対側に住んでいる。

僕が一人で
トーストを食べていると
バールが呼んだ。

「ジェルニーの木に
丘りんごが実ったよ」

丘の上の木になるりんごは赤と青。

一つの木に
赤りんごと青りんごが
いっぺんになる姿は、
クリスマスツリーのようだ。

さっそく、僕たちは丘へ行き、
最初に
バールがジェルニーの木に登って、
赤と青のりんごを
大きな籠を持っている僕に投げた。

次は僕。

僕は木に登り
バールの籠めがけて
一つ二つ三つ・・・

「わっ!やられた!」

バールの頭に
青りんごが直撃。

「大丈夫かい?バール!」

けれど、
引っ繰り返ったまま、
返事がない。

「ああ、大変だ。
ごめんよ。
誰か呼ばなきゃ」

その時、
バールは目を開け
ニャッと笑った。

「あーっ!」

バールは、
ぴょんと飛び上がり
走って逃げ、
僕はぐるぐる木の周りを追いかけた。

二人とも目が回って
バタリと倒れて笑った。

そして、
りんごを食べた。

赤いのは甘く
青いのは甘酸っぱい。

僕たちは、
右手に赤、
左手に青りんごを持ち
交互に食べた。

バールが言った。

「なぜ、赤と青だと思う?」

「え? さあ・・・アダムとイヴかな?」

「ん。・・・太陽と月かな。光と影。表と裏」

「過去と未来。嘘と本当。空と大地・・・」

家に戻ると
レイじいさんが帰っていた。

「ハト電報で
ハウバートの危篤と知って
慌てて行ったら、
梨の木から落ちて
足をくじいただけじゃった。
それで
彼の梨園で
わしが梨採りさ」

僕たちは、
テーブルの上に
梨とりんごを
たくさん並べて
たくさん食べた。

そして、
レイじいさんの古い友人の話を聞いた。

「・・・ねえ、丘りんごは
なぜ、赤と青だと思う?」

「んー、
罪と罰?
夢と現実、
破壊と創造・・・
いやいや、君とわし。
友と友。
どうかな?」


To be continued. 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?