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ぼくはピート、そしてレイじいさん 第15話

第15話 「宇宙の答え」


石ころを蹴ったら、
ハットムの木の根元に当たった。

木の窓から
詩の掟鳥が顔を出す。

「今、宇宙の小爆発を見たよ」

「宇宙の小爆発って、何?」

「石ころを蹴っ飛ばして隅っこに当たるもの」

パタンと窓は閉じる。

僕は石ころを探す。

黄色い小さな石ころは見付からず
消えてしまったのか
バラバラに壊れてしまったのか。

その時、
小さな声が
キュウキュウキュウ。

僕は、
木の裏側に回り込む。

木の皮と同じように、
くっついて
くいこんでいる
黄色い石ころを発見した。

石ころをはがす。

穴があいている。

声は、
穴から聞こえていた。

僕は覗く。

声は
僕を見る。

宇宙虫だった。

「何で、こんな所に?」

「落ちてきたの。宇宙から」

宇宙虫は、
キュウと鳴く。

「かわいそうだね。戻れないの?」

「戻れないよ。でも、かわいそうじゃない」

「でも、泣いてるじゃない」

「悲しくて鳴いてるんじゃないよ。
だって、ここも宇宙だもの」 

僕は、穴を覗く。

木の穴の中には、
きらめく宇宙があった。

無数の星と光の海が。

「じゃあ、何で泣いているの?」

「秘密」
と言って、
宇宙虫は目を閉じた。

僕は、
黄色い石ころを
ポケットに入れて帰る。

「ピートくん。これは、すてきだぞっ」

部屋に戻ると、
レイじいさんが
掌から
黄色い卵を出して見せた。

「木の根元に落ちていたんだよ」

卵は、
石ころと
とてもよく似ていた。

二つ並べて、
植木鉢の中に入れると、
一週間後に卵は割れ、
サカサ虫が生まれ、
石ころは
少しふくらんでから
パッと散った。

花火のように。

「宇宙の小爆発を見たよ」
と言って、
サカサ虫は逃げていった。

空っぽの植木鉢からは
やがて
芽が出て
黄色い花が咲き
黄色の実り。

「これは何なの?」
と僕が聞くと
「宇宙のなりわいか成り行き」
とレイじいさんは答えた。


To be continued. 


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