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ぼくはピート、そしてレイじいさん 第14話

第14話 「虹現象」


僕たちの夢のような現実の一つに、
虹現象というものがある。

二重虹が架かる時、
七通りの世界がやってくるのだ。

服作りのメジャーさんは、
世界は
水色もしくは涙色だと言う。

空と涙は
微妙に絡み合って溶け合って
藤の雫になる。

空は、
小さな涙を吸い上げて、
あれだけ広くなれるのさ
と水溜りを見ながら
メジャーさんは笑った。

パン職人のクーキーさんは、
世界は紅、
もしくは回り続ける風車だと言う。

結局、
回り続けるしかないのさ、
でも、
それでも回り続けられるというすごさを知ったよ
と肩をすくめ、
夕焼け色の看板を裏返す。

七色の影を作るレントンさんは、
たくさんの影を集め
影を紡ぎ
夢を織る。

世界は、
はみ出した銀細工
もしくは
古びたヤカンだね
と言った。

つまり、
どうにでもなるが、
元を辿れば一緒だということだ
と影を解き放つ。

影は、
解放され
飛び立つ雲になる。

時間係のビョームさんは、
時計をにらみながら
呟いた。

一分遅れた。

だが、
それもすてきだ。

一分余計に
生きられるからね
と言った。

それで、
世界はクリーム
もしくは
ビロードになる。

なぜなら
人は、
草の上に寝っ転がって、
あくびをするのが一番だからさ
と笑った。

七色の数が出たね
とバールが言う。

この間、
海の向こうから引っ越してきた
緑と赤のテントに住む友達だ。

バールは
二重虹を数え始め、
本当は百色も二百色もあるんだ、
ね、見えるだろう?
と言って、
いたずらっぽく笑う。

まるで空から降りてきたかのように、
レイじいさんは
七色の傘をポンと開いてやってきた。

もう雨はあがったよ
と僕が言うと、
雨は始終降ったりやんだりさ
と空を見上げた。

「優に三百はある星を見たよ。
世界は
中から見るのと
外から見るのと違うんだ。
空は緑色にもなるんだよ。
赤が灰になるように」 

僕には、
豆電球のような地球が
鳥に見えた。

虹は
二重になって
僕たちに語りかける。

世界は、
七通り以上の存在意識があると。



To be continued. 

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