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ぼくはピート、そしてレイじいさん 第12話

第12話 「時間の旅」


音楽の源を
探す旅に出た。

古い自動車を
空色に塗り替えて。

僕とレイじいさん、
それから
犬のポリと
猫のファニも一緒だ。

「コロボル族の眠る、
合い塚に行けば、
手掛かりが見付かるかもしれん」

レイじいさんは、
子供の頃に、
おばあさんに歌ってもらった
コロボルドッポという歌を
思い出そうとしている。

それは
昔々、
この島に住んでいた
コロボル族の歌で、
今はもう
誰も覚えていないもの。

忘れ去られた
昔の歌を取り戻しに
僕たちは
合い塚に向かった。

ところが、
長い長い一本道の途中で、
ポリが消えた。

僕たちが
ちょっと目を離した隙に。

ファニは、
心配気に
外を見ている。

その時、
突然、
風のマーチが鳴り響き、
一本道を横断する動物たちが現れた。

十、二十、三十、
たくさんの
牛、馬、鶏、豚、
そして
犬たちが、
僕たちの前を
悠然と通っていく。

僕たちの車は止まったまま。

後ろも
向かいの車も。

車の行列は
プープーッと
クラクションの音。

だけど、
風のマーチは高らかに、
動物たちは、
のしのしと歩く。

何かに向かって。

僕は、
その方向を見た。

遠くの山から
のろしが
あがる。

それは、
ゆっくり
音楽に
変わった。

「コロボルドッポだ・・・
そうだ。
思い出したぞ。
おばあさんが言ってたよ。
コロボル族は、
動物と共に生きていたって。
そういう歌なんだ」

レイじいさんは、
手拍子を
のろしのリズムに合わせ
歌った。

僕も
一緒に歌い出す。

「リペラカルリトン
サマラカマーサ
コロボルドッポ
テレンサハッサ
コロボルドッポ・・・」

僕たちは、
一時間
二時間・・・

動物の横断を眺めていた。

そうだ。

昔の暮らしは、
こんなふうだ。

歩くのに
一時間二時間・・・
車のない生活。

「ワォン!」
とポリが戻ってきた。

僕たちは
我に返り
レイじいさんが
慌ててエンジンをかける。

他の車も
忘れていたかのように
突然
動き出す。

まるで
時間が
止まっていたみたいだ。

「昔の時間を
取り戻したのかな」

「ん。音楽とは、そういうものかもしれんよ」

僕たちは、
一本道を行く。

夕焼けに向かって。



To be continued. 

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