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ぼくはピート、そしてレイじいさん 第1話

第1話 「ぼくはピート、そしてレイじいさん」


これは旅の話。

ぼくは、
レイじいさんと暮らしている。

グリーングラス島は、
新しくて懐かしい島だ。

歴史はあって
歴史は作られる。

そして、
ぼくとレイじいさんは、
一緒に新しい何かを作っている。

ぼくは、
晴れた日に
屋根によじ登って昼寝をしていた。

レイじいさんは、
屋根裏部屋で、
昔の本を整理している。

天窓から声が聞こえた。

更なる旅へ
と響く。

ぼくは、
夢の中で旅をした。

レイじいさんの声は
小さく大きく脳に語りかけた。

いつも小さな頃から、
赤ん坊の頃から
旅をしていたという話だった。

空へ山へ海へ。

そして、
魔法使いになる決心をしたというところで
声は低く密やかになった。

魔法使いになれば、
どこへでも行けるからだ。

更なる旅は続く
という声で、
ぼくは目覚めた。

天窓から覗くと
レイじいさんが
古ぼけた茶色い本をぺらりとめくっていた。

更に更に…
レイじいさんの声は、
消されていった。

泣いているのかなと思い
心配になって声をかけた。

レイじいさんは、
目をこすっていたが
天窓に向かって笑った。

終わりなき旅へ
という本を発見したよ
とニコニコ歯を見せた。

わしのじいさんの話じゃ。
まるで
わしとそっくりだった。
怖いくらいだ。
しかし、
肝心なところが書かれておらん。
魔法使いになって
どうなったかというところじゃ。
わしが
これからどうなるかってことが
分からないというのと一緒じゃ。
これじゃ意味がない。

レイじいさんは、
目を凝らしたが
白いページ、
いや茶色い何も書かれていないページが
続くばかりだった。

これは、魔法で書かれている。
時が経てば、経っただけ、
先が見えるのかもしれん。
ということは…

ぼくの見えるページは、
ぼくの生きた分だけだった。

つまり、10ページかそこらまで。

ぼくたちは、屋根裏に…

また、
その本を
もとにあった箱に戻した。

そして、
お互いに
読んだことは教えない。

なぜなら、
レイじいさんが読んだ10ページと
ぼくが読んだ10ページは、
どうやら内容が違うようだったからだ。

それぞれの人生が違うように。


To be continued. 



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