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ぼくはピート、そしてレイじいさん 第16話

第16話 「故郷の島」


渡り鳥新聞が投函された。

僕は、
丘の上の木のてっぺんで休む
パーソンさんに挨拶する。

「パーソンさん。どこに行ってたの?」

「やあ。ピートくん。
故郷だよ。
貝の島のカタリ島。
大きな波が打ち寄せる海岸がある」

「すてきだね」

「でも、
ここ数年で、随分と人が増えたみたいだ。
貝の島は、
鳥の住む島だったのにね」

「そうなんだ・・・」

「でも人々は、
私たちを歓迎してくれたよ。
だから、
やっぱり貝の島は、
私の故郷なんだ」

「・・・いいなあ。故郷があって」

「君だって、ここが故郷だろう。すてきだよ」

確かに
僕も気に入っている。

でも故郷って、
もっと遠いものだと思っていた。

「ところで、新聞読んだかい?」

「まだなんだ。
レイじいさんが読んでる」

「そう。レイじいさんによろしくね」

そう言って
風向きを確かめるパーソンさんは、
彫刻のようにそびえて見えた。

家に戻ると、
レイじいさんが、
ロッキングチェアに揺られながら
目をつむっていた。

テーブルには
新聞が開かれ
「故郷の島」
作家パーソン
と書かれていた。

「海光る海の奥深くに潜む
貝殻たちが形作る
我が最愛の島。
幾千万の種に及ぶ生き物たちの島は、
貝殻と共に
永久に宝物箱に閉じ込められ、
美しき標本のように保管されるかと思われたが、
小さな箱は人々によって開かれた。
果たして
夢のようなことなのか
現実の有り様か。
だが、
静かな島は
明るい日射しに満ち始めた。
波は高く、
波乗りをする子供たちや
貝を組み立て家を作る親たち。
人々もまた生き物である。
流れながら空から見下ろす目には
何が映っていくのか。
生命の発展を願い
空を旋回する・・・」

窓の外で
「ピュートル」という鳴き声。

僕は窓の外を見る。

パーソンさんの姿は見えなかったけれど、
きっと次のどこかに向かって羽ばたいているのだろう。

僕は、
自分の故郷を
もう一度
見渡してみようと思った。




To be continued. 


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