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ぼくはピート、そしてレイじいさん 第9話

第9話 「夢の中の夢」


雪が降る。

ゆきつばめが
降りてくる。

ゆきみみウサギが
跳ね回る。

くもが
くもの巣を編むように、
ゆきつばめは、
あわ雪ぼた雪
絡み合わせて
雪景色を織っていく。

ゆきみみウサギは
お手伝い。

跳ね回りながら
雪をまく。

雪を積む。

雪を転がす。

僕は、
雪の音を聞く。

静かで深い調べは、
遠くまで澄んでいく。

「森の木、おやすみ。
小鳥もおやすみ。
降り積もる物語は、
冷たい夜に
花が咲く・・・」

雪風の声だ。

動物たちの足跡も、
さああっと
消していく。

僕は、
白い白い雪の原に
そっと足を下ろす。

一番乗りの印。

雪の印を。

「ピートくん!」

レイじいさんの声で、
僕は目覚めた。

僕は、
ベッドの上。

部屋の窓に、
雪の玉が、
ポーンポーンと
二つ当たって落ちていった。

僕は、
あわてて
窓に近寄ると
庭で、
レイじいさんが
手を振っている。

二人乗りの雪型ボードを持って。

雪の原には、
たくさんの
大きな
小さな
雪だるまたち。

みんなが笑い声をあげて、
ソリやスキーで遊んでいる。

足跡がいっぱいだ。

ゆきつばめも
ゆきみみウサギも
消えてしまった。

僕は、
がっかりして、
目をつむる。

「ピートくん」

レイじいさんの声がして、
僕は目覚めた。

「雪だよ。ピートくん」

僕は
ベッドの中だった。

驚いて
窓の外を見た。

まだ
外は暗い。

「雪見をしないかい?」

「ゆきみ?」

「雪を眺めるのさ。
誰の足跡もない
雪をね」

僕は、
初めて雪見をした。

窓のそばに座って、
二人で
ホットレモネードを飲みながら。

「ワシは、夢の中の夢を見たよ」

「え? ホント?」

僕は、驚いた。

僕も同じだ。

僕たちは、
夢の中の
夢の
積もる話をした。

夜が明けるまで。

白い光と
黄色い光が混じり合う、
その瞬間まで。

そして、
そのあとで、
二人で外に出て、
一番乗りの印をつけるんだ。


To be continued. 

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