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ツボ界の吉野家

ボロボロだ。
肌荒れがひどく、ヒリヒリするほどになってしまった。それが落ち着いたかと思えば膝に痛みが出て、肩こりからくる頭痛にも悩まされる。空を仰ぎ見ては「もう先は長くないな……」とつぶやく。しかし、いくら嘆いたところで空と僕との間にはいつも冷たい雨しか降らないので、皮膚科に行ったり、湿布を貼ったりしてしのいでいた。

そんな折、自称ツボに詳しい同僚が手にパッチ鍼を貼っているのを見かけた。親指と人さし指の付け根の中間で、「合谷(ごうこく)」というところらしい。なんでもそこは「ツボ界の吉野家」と呼ばれているとのこと。要はいろんなところに効果あるところが、「うまい、やすい、はやい」に通じているらしい。そのたとえ、合っているのか?

合谷のことを調べてみると、肩こりや眼精疲労、風邪のひきはじめにも効果あるらしい。さすが吉野家だ。効用のほうも超特盛。ダメならダメでとっとと剥がして同僚のこめかみにでもパチーンと貼り付けてやればいいので、物は試しでパッチ鍼を買ってきた。

貼ったまま土日を過ごしてみたが、確かに肩こりや目の疲れが楽になった……気がする。プラシーボかもしれない。これがエッセイマンガなら「うをー、肩が軽くなったぁっ!(お目々うるうるで腕をグルングルン回す絵)」なところだが、そこまで劇的な変化はない。現実とはそういうものだ。

それから、この場所はかなり目立つのも難点だ。貼ったまま出社するには抵抗がある。休日をともに過ごした鍼に別れを告げ、剥がす。

なんか血を吸われたみたいになっていた。よく考えたら合谷を適度に刺激することが大事なのであり、別に鍼じゃなくてもよかった。たまに指圧するだけでもいいのだ。そんなに効果があるなら一生そこを押さえておけって気もするのだが、いくら吉野家がうまくて早くて安くても、毎日は通わないものだ。そういうものなのだ。

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