#365日ショートショート by 結騎了 を振り返る~100日記念編~

はじめに

結騎了さんというのは、僕がここ数年で一番読んでいるブログを運営している方で、僕のコンテンツ批評やレビュー執筆の師匠……だと勝手に思っている方です。

コンテンツを味わう視点の多彩さ、言語化の深さ、文章の読みやすさ……いずれもお手本にしたい。何より、「自分はこういう好みなので」という偏りを貫く姿勢がいい。
オタク個人によるテキストの面白さを教えてくれた方ですし、僕がnoteを書くうえで目標にしつづけている方です。ライムスター宇多丸氏と並ぶ、コンテンツ語りの師匠(と一方的に慕っているだけ)

僕がYOASOBIレポに呼んでいただいたのも、この方のブログで勉強したおかげでは……というくらい、僕の中ではビッグな方です。

結騎さんは元々ブログを中心に、レビューやエッセイを執筆されていました。小説やシナリオ案の投稿もありましたが、割合としてはかなり少なめだった印象です(昔は2chでのSS投稿もされていたそうですが、僕はその文化すら知らないもので……)
しかし今年元日から、ショートショートを毎日投稿されています。新ネタを、毎日。

上の記事にある通り、「創作のインプットがマンネリ化してきたので」「とにかくアウトプットしてみよう」という狙いだそうですが、いや、自分に課すレベル高すぎません??

僕が長編小説や短編二次創作……つまり大筋やキャラがベースにあるエピソードを中心に書いてきたから、かもしれませんが。新しいアイデアや話の筋を毎日考えるの、相当大変だと思うんですよ……2~3日ごとに短編を上げるカクヨムの企画も経験していますが、僕はひと月でスタミナ切れになっていますし。

結騎さんが長く小説を書いているイメージもなかったので、失礼ながら
「さすがに365日は無理じゃないかな……」
「せめて1ヶ月とか、週1本とかにしときません?」
という印象を内心で抱いていました。

しかし。
休むことなく、100日、達成されています。
ストックもあるとはいえ、100本きっちり書いています。
しかも、面白い。
毎日更新が楽しみになるくらい、ちゃんと面白い。

(それでいてブログ更新も続いているし、色んなコンテンツを摂取しているし、特に年度末はお仕事も忙しかったそうですし、マジで時間の使い方が上手い……!)

かくして。
結騎さんがここまでの本気を見せているのなら、弟子(自称)であり小説書きでもある僕も気合いを入れて迎えねばならぬと思うのです。

つまりは、結騎さんの作品の面白さを、ツイートだけでなくまとまった文章で整理していく。結騎さんの創作筋トレへの感想をまとめることで、僕も創作のインプットを鍛える、そんな記事を記念ごとに投稿していこう……という趣旨です。

完遂された暁には(アトロク式でいう)ひとり総選挙を催したいとも思っておりますが、まずは100日。

今回は「巧さに唸った」「おかしくて笑った」「ダークさに震えた」「結騎さんらしさを感じた」「とにかく好き」の5部門で3作品ずつ、感想を記していきます。

ちなみに、各作へのネタバレは全開ですのでご注意を。




巧さに唸った、ウィット部門

まずはアイデアや構成に秀逸さを感じた作品から。ショートショートの旨味の最たる部分だと思います。

2作目にしていきなり「結騎さん流だ……」と唸った作品です。
特撮オタクであり保険営業の経験もあった結騎さん、過去には「怪獣保険ってどうなるんだろ」と検討もされた様子。これだけでも面白い読み物。

そ・の・う・え・で。
怪獣保険があるなら、怪獣保険を利用した闇ビジネスも横行するし、なんなら怪獣側と組んだ業者も出てくるだろう……という発想。
そこに、「工場の価値が下がっていることも隠滅しちゃえ」という意図が絡んでくることで、ディティールもグンと上がってくる。そしてウルトラシリーズでおなじみ「戦闘は3分間」という要素にも新たな解釈を持ってくる。

これは、ありますよ。怪獣がいる世界なら、こうした商談は、ある。
現実の基準で特撮にツッコむのではなく、特撮世界における現実味を醸す。面白い!!


同じく怪獣モノですが、真逆の発想。つまり、現実に特撮文法を持ち込んだら何が起こるか。

地震・津波が、怪獣の仕業だったなら。
人類、というか日本人は、「天災そのものを憎んでも仕方ない」ではなく、「その獣を許すな」という思考になるだろう……というお話。

天災が起きたとき、海や大地を憎む人は少なくても、人災を非難する人は多いじゃないですか。つまり、人格(キャラ)を見いだせる存在に対してこそ、人は闘志や憎悪を燃やせる。示唆に富む面白さでした。

余談ですが、特撮における敵は基本的にキャラ性を持っています。怪獣であれ、怪人であれ。悪意や害意を持っているともいえる。
その例外の一つが『仮面ライダー鎧武』だな……と僕は思っており、そこが『鎧武』の面白さにもつながっていたので、嬉しい作品でした。

この2編、結騎さんのホームともいえる「怪獣」を用いての発想が秀逸でした。巧さはそれに留まらず。


好きな少女をを支える少年の話……と思わせつつ、成仏できない少女を見守る少年の話であった、というオチのお話。

まずこういう構図が、断絶されても一途に想い続ける悲恋の話が、すごく好きなんですよ。そういう関係性をやりたくて書いている長編もあるくらい。
彼が彼女を見守ることが依存になりつつある、その危うさもいいです。

そのうえで、ミスリードと伏線が上手い。

引き出しの中には、読みかけの文庫本。僕もこの本、もう何回も読んだよ。
泉さんは勇気を出して野上さんに話しかけたけど、無視されてしまった。
そんな君の事情は、先生だって分かってくれてるはずだから。きっと当てられることはないよ。
車に轢かれないことを分かってそうしてるんだよね。
家に着いて、君は静かに玄関を通り過ぎていく。

という描写の数々が、「だって彼女は幽霊だから」に収束していく鮮やかさ。オチから逆算しての仕込み、いい。


コンパクトな捻り技、笑わせてもらいました。
しかし、マゾヒズムの根本にも迫る話なんですよね……「普通の人が嫌がることを望む」なのか、「マゾの望みこそ裏切られるのが本領」なのか……たぶん前者な気はしますが。


死神×お仕事。後輩の失敗のアフターケアと思いきや……という。

作中で語られる主張・流儀と作品の構造が一致しているの、大好きなんですよね。死神のいう「幸福と絶望の落差」が話の展開とマッチしている旨味。
ちなみに落差どうこうの話は、(『鎧武』ライターでもある)虚淵氏の作風を思い出したりもしました。アレとかは話の根幹がそうでしたし(リンク先ネタバレ注意)、他作品でも「上げて落とす」戦法が印象深いです。

そして主人公が嫌な奴というか、「死神の標的にされてもまあ良いやってなるキャラ」なのも良いんですよね。読み味のコントロール。


気持ち良く笑った、ユーモア部門

続いては笑えた作品を。ここに挙げるのは全部、声出して笑ってしまったものです。

僕は「ジャンルのミスリード」「ジャンル移動」が大好きなんですが、これはショートショートだからこそ許されるタイプのミスリードですね。

犯人は場外、殺害方法はオーバーテクノロジー。『ノックスの十戒』どころの話ではない、もはやミステリ殺しです。だからこそ、大真面目に推理劇の導入をやった後の種明かしが滑稽で仕方ない。

そう、オチでひっくり返す前のミスリードや前振りをしっかりやるのが大事なんですよ。

そして「オチへ向かう前振り」が好きなのでもう一つ。


「リモート」を民明書房的に扱った発想も大好きなんですけど、そこまでの時代小説っぽい雰囲気も良いんですよね。本格的とまではいかなくても、ショートショートに合った「それっぽさ」が楽しい。

ここからは一発ネタ系。


怪盗が予告メールで文字化けをやらかすという発想から面白いんですが、ウェブ小説のUIを活かしたネタだな~と思うのです。
本文の情報ではなくタイトルやコピーが表示された画面があって、本文へと移行する、その瞬間にコレが目に飛び込んでくる……というリズム感。


メタい。この企画ならでは。
ユーザーのことを思って厳しく接する、これが愛 (AI) のムチでござるか。


そして、何度読んでも笑えて仕方ないのが。

こちら、も~~う大好き。

そもそもですね、「対決を続けるなかで互いを理解していく、信頼にも似た関係のライバル」という要素については、結騎さん自身がドップリ浸かっているんですよ。

だから今回も、ルパパト的なライバル関係を探偵&怪盗でやるのかな~と思ったし、前半まではそういう雰囲気あったんですよ。「手の内」がいくつも考えられているのも凝っていますし。

からの、後半。
EDMのドロップ前スネア連打よろしく、読みの応酬が加速したかと思えば、そもそもの舞台設定が崩壊していく混沌とした様相になります。


この、ひっくり返しまくって散らかった状態で終わるのがめちゃくちゃ好きで。最初のシリアスさとのギャップや文のリズム感で、中毒級に笑えます。一本でここまで楽しませてくれたの、感謝しかない……


苦味に震えた、ダーク編

オチは爽快なだけでなく、苦味や痛烈な皮肉を味わわせる作品も多くありました。

この記事を読まれているような貴方も、この手の症状には心当たりがあるのでは……ネットを徘徊するオタクをまとめて刺す、なんなら結騎さん自身も刺しているであろう、殺傷力の高い一作。
僕は過剰なマルチタスクには反対なんですけど、それは「結果として集中力が散ってインプットの質が落ちるから」なんですよ、そういうところだぞ。


ハッピーとは言いにくいけどバッドじゃないビターエンド~~好き!!

タイムリープ×救出モノ、王道ですよね。しかし誰もが、その物語のゴールを「ループの末に大事な人を救出して、主人公と結ばれる」だと想定する……悲恋テイストであれば「一緒に過ごした思い出を胸に、別れを受け容れる」かもしれませんが、出会いの存在は前提です。

そうした先入観があるからこそ、「出会いをなくすことが生存ルート」というオチがドスンと効いてくるし、主人公の献身が印象に残る。
加えて。納得しづらい理由でハッピーエンドになるより、筋を通してビターエンドにした方が、僕には好感です。その意味でも好き。

ちなみに。
オチをコンパクトに開示したところで締めるのが、ショートショートらしいというか、結騎さんの好みなのかな~と思いました。僕だったらもっとウェットに、主人公のモノローグを長めに入れるんだろうなと。


ここからは、社会風刺的なテイストが入った作品も。

「なんでもかんでも変えればいいワケじゃない」シリーズ、その一。
今、というかTwitter世論、保守的なシステムをとにかく壊していこうみたいな声が流行りがちだとは思うんですが。
続いているもの、変わらないものにも意味があるんだぞ~そこ無視すると危ないぞ~という提示を渋い後味に絡めて出される、いい一編でした。結騎さん自身の感覚の変化とも通じていそうですしね。


余談ですが。
「保守的なシステムの役割を継承しつつ」「時代に合わせた改革を少しずつ進めようね」みたいな話、僕も最近よく読んでいるので、そこのシンクロも嬉しかったです。


「なんでもかんでも変えればいいワケじゃない」シリーズ、その二。
物事にはキャパシティがあるから、選択肢を増やすのは言うほど簡単じゃない……という話ではあるのですが。

注目したのはタイトルです。
素直に名付ければ『サービスしすぎたうどん屋』とか、『頑張りすぎたうどん屋』になりそうなんですが、『多様なうどん屋』なんですよ。
このワードをあえて入れてきたこと、「選べるのが大事」という客の発言……今のどういう言説に何を思ってるのか、深読みしたいような、したくないような。


ダーク系で一番好きなのがコチラ。
まず設定が最高なんですよ。ヒーローが沢山いて、課金支援と個人向けサービスが隆盛を極めている……このネタだけで色んな話が書けそうです。

メタリックなスーツに身を包んだ「クロムマン」に、ニューヨークを守った「イエンジャーズ」に……知らないのによく分かる、直球のアメコミパロも笑わせてくれます。なんならイエンジャーズの騒動とか読みたい。

か・ら・の。
「支援するけど対価は求めない」「けど、本当に危ないときは守ってくれる」という主人公の願いが裏切られるラスト。
裏切ったのは彼女でもヒーローでもない、二人をつないでいたサービスの仕様そのもの。課金額による条件付け。

裏切りとも取れますが、理不尽ではない。「細かな条件付けが長々と続く利用規約」があることは明示されています、そこにちゃんと書いてあるはず。けど彼女は熟読していなかっただろうし、この記述を気にしていなかった読者も多いでしょう。これぞ伏線。


結騎さんっぽさを感じた、パーソナリティ編

結騎さんのブログやTwitterは、ご自身の趣味や思考回路を丸出しにするようなスタイルなので、読んでいるうちに「結騎さんっぽい趣味・思考」が分かるようになってくるんですね。
で、ショートショートを読んでいるとその「っぽさ」を思い出して納得したりおかしくなったりもするのです。ここからはそうした作品を挙げていきます。

特撮の新視点、その一。
ウルトラシリーズの「変身した隊員が」「戦闘後に戻ってくる」展開からの派生。派手に活躍した後の地味~~な帰り道、そのギャップがクスリと来ます。言い訳と自己保身に頭を悩ませるヒーロー、嫌なはずなのに観てて楽しい……


特撮の新視点、その二。
主にライダー・戦隊における、年々派手に激しくなっていく変身音声。
「鳴っているということは」「誰かが録っている」にスポットを当てての、担当声優の奮闘。

変身音声が派手になっていくの、それは単に「子供が喜ぶから」だとは思うのですが、冷静に考えるとやっぱり違和感はあるんですよ。
その違和感にツッコミを入れつつ、結局は全力で演じる土屋氏の姿……継続してニチアサを観ている人の「こんな音声になるの!?」という戸惑いと、「これはこれで好き」という受容にも重なるように感じました……いやこれは読みすぎか。

そしてニチアサの玩具事情を踏まえての、さらなる試練を予告するエンド……そして来年には別の声優さんが呼ばれるのでしょう。

ちなみに僕は、『龍騎』『ファイズ』あたりの無機質な音声の方が好みです……けど『リバイス』の派手な藤森ラップも、つい口ずさみたくなるんですよね。


TCGでカードすり替えができたら強いのでは……と目論むマジシャンの話。面白い掛け算ですよね、それで勝つけどしっぺ返しを食らうのかと思いきや。

相手の先攻で、そのまま負けます。すり替えの余地すら、なし!

調べてみると、TCGでは実際に「ワンターン・キル」という初手完封プレイが起こりうるみたいですね。一方的すぎて制限されたりもするみたいですが……職場の『遊戯王』プレイヤーの「後攻になった時点で負け確定」という発言にビビっていた僕ですが、さらに先があった。

TCGを通ってきた人ならではの発想だな~と感じました、結騎さんは『遊戯王』あたりもプレイされていたようですし。
僕は小学校時代に一瞬『デュエル・マスターズ』をやっていましたが、一緒に遊んでいた友達が物凄いカードの買い方をしていましてね……いや課金以前にゲームの理解もロクにしてなかったですね、シールドトリガーとか全然分かってなかった。


ここまで挙げてきた作品、どれも「色んな作品を摂取しては分析してきたオタク」の思考回路で書かれていると思うのですが。コチラは「三十数年を生きてきた生活者」としての実感が滲んでいて、とても良いのです。

ジゴワットレポートでも、こういう「立場が変わると気づいたこと」みたいな記事が好きなんですよ。

誰にでもある「思考や感覚が変わる」「新しい環境で新しい気づきを得る」を、たびたび丹念にアウトプットしてきた結騎さんですからね。「気づき」それ自体が短編になります。

特にオチも捻りもない、けど等身大の情感が味わい深い一作でした。この手の作品、少なめなのでもっと読みたい……


けどやっぱり結騎さんはこういうオタクだよな~~と実感した作品。

ネットのケンカについて報告を受けている人物が、実はケンカの当事者だった……というオチも面白いんですが。

びっくりウーマン花子の、作品に対するキレ方。半分くらい、というかほぼ、結騎さんが嫌いな展開そのものに思えて、笑いが止まらなかったです。ロジック軽視とか、設定ガン無視とか、安易な泣かせ展開とか。
勿論、結騎さんは「私の感想は私の、君の感想は君の」というスタンスですし、そういう推し方をする他者を攻撃したりはしていないはずなのですが。

作者の顔色が浮かぶキレ芸、おおいに楽しませてもらいました。


最後に、色々ひっくるめて「僕が好き」な作品たちです。

とにかく僕の好み部門

タイムスリップ物かと思いきや、マンガの書き方の話。

「キャラの主張・流儀が、作品の構造と一致していると嬉しい」とは前述しましたが、その典型ですね。編集者のブーメランがウザさたっぷりで、滑稽さと共に納得がこみあげてきます。

ちなみに。クライマックスの激しいアクションの最中に回想が始まり、さらに回想に飛ぶ、それも数分くらいじっくりじっくり……という映画は観たことあります。作品としては大好きなんですけど、やっぱりアレはよくない。


連絡や記録の文章だけで「そこでヤバイことが起きた」が分かるタイプの作品なのですが。
研究室でスマートスピーカーがひとり喋っている、その無機質さと静寂さが味わい深いんですよ……メールが止んだ静けさと、マウスが大暴れしているカオスさ、そのギャップが浮かぶようで。
そして傲慢そうなキャラが酷い目に遭っていそうな皮肉っぷりも良いです。

しかし「エキサイ剤」って味なネーミングですね……相当エキサイするんだろうな、用途はあんまり分からないですけど。


顔から火が出そう(物理)
結騎さんがたびたび書いている慣用句ネタの中でもイチオシです。オチに合う慣用句でコンボを決めつつ、恋する少年と食べたい少女のすれ違いに謎の胸キュンを覚えてしまう始末。締めのテンポが最高。


アイドルを推すファン……と見せかけて、ファンを推すアイドルの話。直球で好きな構図です。
そして明示はされていませんが、印象からして女子アイドルと女子ファン……つまり百合……!!(僕が一番熱くなるジャンルはこの辺です)

結騎さんが百合をやりたくてコレを書いたかは分からないですし、多分「関係性をミスリードしたい」「なら性別は一緒の方がいいし、女子どうしにしよう」という意図かなとは思うんですよ。
けど結果として百合が生まれたなら、それは喜ぶしかないんですよね、P.A.R.T.Yするしかないんですよ。

ちなみに、アイドル→ファンの執着を描いた、大好きな短編もあります。なかなかドロドロしたお話ですが、心理の描き方が最高。



そして、総合的に一番気に入っているのがコチラ。


とにかく構成が綺麗です。古い上司と新しい部下に挟まれる、かつて新しかった中間管理職の主人公。自分が上司に向けてきた苛立ちが、部下が自分に向けるモノと重なりつつある危機感。その自分の立ち位置が、愛してきた缶コーヒーの生産終了にも重なる哀愁。
缶コーヒーを使って苛立ちを表現しつつ、缶コーヒーが主人公の象徴にもなる、始まりも終わりも缶コーヒー。う~ん、綺麗な構成。

そして「年上にExcelを使ってほしい」「その他のITツールも使ってほしい」は結騎さんも働きかけていることで(この辺の記事もすごく好き)

今作において結騎さんの立場に近いのは主人公でしょうし、つまりは結騎さんの「いずれ俺も後輩についていけなくなるかもな、頑張らなくちゃな」という自戒の現われにも思えたりするんですよね……今作で意識したかはともかく、そういう可能性をちゃんと考えている人だとは思っています。

小説の巧さと作者の人柄を一気に味わえる、何度読んでもお気に入りの一作でした。


ということで、まずは100作から25作をピックアップ。改めてまとめ直すと楽しかったです。
毎日連載、読者としても非常に楽しいのですが、書き手としてもいい刺激になっております。作風は全く違うとはいえ、同じサイトでこれだけのチャレンジを続けているのは心強くもありますし。

100本ノックで、結騎さんも種々の「型」が頭に馴染んできた頃でしょうか。
しかしこれまでの「型」の焼き直しだけでマンネリ化してしまうことは、ご本人にとっても不本意なはず……残りおよそ7割、工夫の広がりが楽しみです。ご自愛しつつ、頑張ってくださいね!



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