『星の約束』ープラネタリウム
田舎の大きな公園の中にあるプラネタリウム。
外観はひどくさびれているが、入口近くに立てられた掲示板には真新しいチラシが貼られている。
チラシには今月のプログラムという大きな文字が印刷され、その下に小さな文字で<春の星座>、<星座にまつわる神話>と書かれていた。
時子は少し屈んでプログラムの開始時刻を確認した後、顔を上げドーム状の屋根を仰いだ。
不意に風が吹き、白いワンピースの裾が揺れる。
もう4月も半ばだというのに風は冷たく、朝晩には薄手のコートが要るほどだ。
時子は薄手のカーディガンの上から腕をさすった。
プラネタリウムは時子にとって思い出の場所だ。
子どもの頃は母に連れられてよく見に来ていたのだが、その頃はあまり星座への興味はなく、暗い館内で兄とふざけ合うのが楽しかった。
建物自体はあの頃と比べ随分とさびれた感じはあるが、平日にもかかわらず小さな子どもを連れた母親や老夫婦が訪れている様子を見ると、少し安心する。
時子は有休を取り、思い切ってここに来て良かったと感じた。
ふと学校のチャイムに似た音楽が流れ、女性のアナウンスが響く。
「あと10分でプログラムが始まります。チケットをお持ちでない方は、お早めにチケット売り場にてご購入ください」
時子はアナウンスを最後まで聞くことなく入口をくぐり、チケット売り場へ速足で向かった。
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