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【知らないと危険】 褒めて伸ばす事のデメリットを臨床心理士が伝授


 

「褒めて伸ばすのは間違い?」

人間関係を良くしたり、子どもを伸ばすために「褒めて伸ばす」ことは良いと思っている方は非常に多いです。しかし、安易に「褒めて伸ばす」ことには恐るべきデメリットがいくつもあります。

一方で、人間関係を良くしたり人を伸ばすために、心理学的に裏付けられた「適切な褒め方」というものがあります。

安易に褒めて伸ばすことをやめて、適切に褒めることを学べばより人間関係を良好にしたり、部下や子どもを伸ばすことができます。

今回は皆さんに安易に褒めて伸ばすデメリットを伝え、適切な褒め方とその効果についてご紹介していきます。
 

褒めて伸ばすことのデメリット3つ

まずは、安易な褒めかたをするとどのようなデメリットがあるかを紹介します。主なものを挙げると以下の3つです。
      
・安易に褒めても伸びない
・伸びたとしても依存的になる
・伸びたとしても挑戦しなくなる
それぞれについて、ここから詳しく解説していきます。

 褒めて伸ばすことのデメリット 安易に褒めても伸びない

褒めたい相手と関係ができていなかったり、良く知らないのにもかかわらず「すごいね」などと安易に褒めてもいいことはありません。

なぜなら能力は伸びないのはもちろん、相手の心に何も響かなかったり最悪の場合は疑いの目で見られるからです。

例えば、音楽大学でピアノを専攻していた女性が遊びで「猫ふんじゃった」を弾いているとき、あなたが『ピアノが弾けてすごいね』と言ったところで相手の心には何も響かないでしょう。

以上のように安易に褒めて伸ばそうとしても、効果がないばかりか相手の気持ちが白けてしまうことさえあります。
 
                 

褒めて伸ばすことのデメリット 伸びたとしても依存的になる

また、褒める側が条件をつけたり、下心を持って褒めることもいい結果を生みません。(これを心理学では「条件付きストローク」と言われています。)
 
なぜなら、相手の能力が伸びる可能性があっても褒める側の思惑があると、相手の精神が不安定になったり依存的になってしまうからです。
 
例えば、恋人に「君は頼むとすぐにお金を貸してくれるから大好きだよ。君は本当に優しい人だね。」と条件付きで褒められたら喜ぶ人もいるかもしれません。しかし、これが何回も続くと「お金が渡せなくなったら嫌われちゃうのかな」「とにかくあの人に嫌われたくない」と不安になり、相手の愛情を得ることに依存します。その人は自分の人生を大切にするのではなく、恋人に嫌われないことばかりを考えるようになってしまいます。
 
以上のように褒める時に条件をつけて褒めると人は人間関係に対して不安に感じ、依存的になるというデメリットがあります。

褒めて伸ばすことのデメリット 伸びたとしても挑戦しなくなる

さらに、褒める側が条件をつけず、下心を持たずに褒める場合でも、デメリットがあります。それは実績や結果だけを褒めてしまう場合です。
 
なぜなら、「よくできたね」と結果を褒めると、相手は「優秀な自分」というイメージを崩したくないという気持ちから、難しいタスクにチャレンジしなくなり、簡単な仕事ばかりをするようになります。さらに、そのような褒めかたが継続されれば成長も見込めず、パフォーマンスも下がってしまうのは当然です。
 
例えば、スタンフォード大学の心理学者Dweck(1998)の研究でこのような結果が出ています。『問題を解く時に「よくできたね」と知能を褒められた子どもの90%が簡単な問題を選ぶ傾向があった。一方、「がんばったね」と頑張りを褒められた子どもの90%はより難しい問題に挑戦した。またこの実験では、「頑張ったね」と「頭が良いね」という褒め方を一年間続けた。その結果、頑張ったねと褒められたグループでは成績のスコアが30%向上したが、逆に「頭が良いね」と言われ続けた子どもの20%はスコアを下げる結果となった。』
 
以上のように褒める時に結果を褒めると、人は難しいタスクに挑戦しなくなるデメリットがあり、その結果長期的には仕事のパフォーマンスが下がってしまう危険性があります。
 

心理学的に適切に褒める方法と効果

それでは、褒めることは人間関係を良くしたり、人を成長させるためによくない行為なのでしょうか。もちろんそんなことはありません。「適切に褒める」ことで人間関係をよくし、人を成長させることができます。その基本的な方法は以下の3つです。
・未来に期待をこめて褒める(ピグマリオン効果)
・存在自体を褒める(無条件のプラスのストローク)
・プロセスを褒める(Dweckの研究結果)
それぞれについて、ここから解説いたします。
 

心理学的に褒める方法と効果 未来に期待をこめて褒める

あなたが誰かを褒めて伸ばしたいと思うのなら、未来に期待をこめて褒めると効果的です。
 
なぜなら「君はきっと出世してこの会社の救世主になる」と言われれば、その人は現状を恐れる事や満足して怠慢になることから解放され、「できる人間は何をするか」「10年後エースになるために今やるべきことは何か」を探求しはじめます。また期待された人に対して心を開き仕事に対してフィードバックを求めるようなります。これらの結果から自ずと自主性を基礎にしたパフォーマンスの向上がみられるからです。
 
実際、心理学者の研究においても以下のような研究結果があります【Rosenthal(1968)】。
『サンフランシスコの小学校で、普通の知能テストを「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」と呼び、学級担任にはこれが将来の成績向上を予測するためのテストであると説明した。しかし、実際にはテスト自体には意味がなく、研究者は無作為に選ばれた児童の名簿を学級担任に見せ、この名簿に記載されている児童が将来の成績向上が期待される子供たちであると伝えた。その後、学級担任は子供たちの成績向上を期待しながら見守り、実際に成績が向上した。』
結果を考察すると、成績が向上した原因は学級担任が子供たちに期待を持ちながら見守ったことにあります。さらに、子供たち自身も期待されていることを意識し、成績が向上したと主張されています。
 
これは心理学では「ピグマリオン効果」と言われており、以上のように期待をこめて褒めるだけで、相手の能力があがることが実証されています。

心理学的に褒める方法と効果 存在自体を褒める

あなたが誰かと良好な人間関係を作るために褒めるなら、無条件で存在自体を褒めることが有効です。
 
なぜなら「どんなあなたでもとても素晴らしいと思うよ」「根拠はないけどなんとなくあなたの空気感が心地よく感じるんだよね」と褒められた相手は、自己肯定感や自己効力感が高まるからです。
 
実際、心理学でもこのような褒めかたは「無条件のプラスのストローク」と呼ばれ、人間関係を良くし、相手に安心感と喜びを与える褒めかたであると言われています。
 
以上のように無条件で存在自体を褒めると人間関係が良くなるばかりか、相手に安心感を与えることができます。

心理学的に褒める方法と効果 プロセスを褒める

さらに、あなたが自身の子どもや部下の成績を伸ばしたいなら、結果ではなく「プロセスを褒める」ことが効果的です。
 
なぜなら、人はプロセスを褒められることで、より難しいタスクにチャレンジしてみようと思うようになるからです。
 
実際、先ほどの心理学者Dweckの研究で示されたように、1年間プロセスを褒められ続けると成績が30%挙がったという結果も出ています。
 
以上のようにプロセスを褒めることによって、人はよりチャレンジングになり、この褒めかたを継続するとパフォーマンスも挙がります。
 
 

適切に褒めることの大切さ まとめ


今回は皆さんに安易に褒めて伸ばすデメリットを伝えて、適切な褒め方とその効果についてご紹介いたしました。
 
まとめると次の通りです。
・褒めて伸ばすことのデメリット 安易に褒めても伸びない
・褒めて伸ばすことのデメリット 伸びたとしても依存的になる
・褒めて伸ばすことのデメリット 伸びたとしても挑戦しなくなる
・心理学的に褒める方法と効果 未来に期待をこめて褒める
・心理学的に褒める方法と効果 存在自体を褒める
・心理学的に褒める方法と効果 プロセスを褒める
 
上記のポイントをおさえて、安易に褒めて伸ばすことをやめて、適切に褒めること実践すればより人間関係を良好にしたり、部下や子どもを伸ばすことができます。
 
今回は長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
 
<参考文献>
・Mueller, C. M., & Dweck, C. S. (1998) Praise for intelligence can undermine children's motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33–52.
・Rosenthal, R. & Jacobson, L.(1968):"Pygmalion in the classroom",Holt, Rinehart & Winston

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