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臨床心理士が教える「5月の予期しない暑さと心の変化」について

今年の5月はエルニーニョ現象の影響で夏なみに暑くなる!?

こんにちは、臨床心理士のいちかです。私は1年のうちで一番5月が好きです。夏は暑いし、冬は寒い。秋は快適ですが子どもの行事が多く忙しい…。春は花粉症に悩まされるのですが、5月になるとちょうど花粉症も落ち着いてきます。また、仕事に慣れてきたところでゴールデンウィークに入り、例年ですと、そのあともさわやかな気候で快適に仕事をしたり休日を楽しめるからです。

しかし今年はどうやら今週からエルニーニョ現象の影響で5月らしくない暑さになるとのこと!なんとまあ暑さに弱い私はショックを受けています・・・。
予期しない暑さで、私と同じく「いやだなー」と感じる方も多そうですが、この「暑さ」は実は心理的な変化を起こします。
今回は、暑さと心の変化とその対処ついてお話しします。ぜひ気温と心の変化の関係を知って、この5月の異常な暑さを乗り切りましょう!

1、暑さで心はどのような変化がみられるか

暑さと心の変化というと、どんなことを思い浮かべますか?イライラしたり、やる気がなくなったり、眠気が強くなったり、などでしょうか。実は、これらの症状は、暑さが心に与える影響の一部に過ぎません。暑さは、心の働きにさまざまな影響を及ぼします。その中でも、特に注意したいのが、以下の3つです。

1. 暑さはストレス反応を引き起こす
暑さは、体温調節に関わる自律神経やホルモンのバランスを崩します。これにより、ストレス反応が引き起こされます。ストレス反応とは、危険や脅威に対して体が備える反応で、心拍数や血圧が上昇したり、筋肉が緊張したりします。しかし、暑さは危険や脅威ではありません。それでもストレス反応が起こると、体に無駄な負担がかかります。また、ストレス反応は感情や思考にも影響します。不安や恐怖、怒りや悲しみなどのネガティブな感情が強くなったり、物事を悪く考えがちになったりします。

2. 暑さは気分を下げる
暑さは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの分泌量を減らします。これらの神経伝達物質は、気分や活力に関係するものです。そのため、暑さによって分泌量が減ると、気分が落ち込んだり、やる気がなくなったりします。また、暑さは睡眠の質を低下させます。睡眠不足は、気分や活力にも悪影響を及ぼします。

3. 暑さは判断力や記憶力を低下させる
暑さは、脳の働きにも影響します。特に、前頭前野と呼ばれる部分に影響を与えます。前頭前野は、判断力や記憶力、注意力などの高次認知機能に関係する部分です。そのため、暑さによって前頭前野の働きが低下すると、物事を正しく判断できなかったり、忘れ物をしたり、集中力がなくなったりします。

実際、心理学の研究結果では、たとえば心理学者の三浦豊彦氏によると、夏季には作業の能率は、25℃くらいが一番よいとされています。また、心理学者の堀江悟郎氏によると、22〜34℃の4段階の温度条件の中で、作業のパフォーマンスは、気温30℃において最も低く、その他の気温条件下において高い結果を得ています。

2、暑さによる心理的変化への対処法

では、どうすれば暑さによる心理的変化に対処できるでしょうか?私は、以下の3つのポイントをおすすめします。

1. 環境調整を心がける(水分補給・涼しい場所で休憩・エアコンをためらわない)
水分補給は、暑さによる脱水症状を防ぎ、体温調節や血液循環を促進します。水分補給は、心の健康にも重要です。水分不足は、頭痛やめまい、疲労感などを引き起こし、気分や感情のコントロールにも影響します。水分補給は、1日に2リットル以上を目安にしましょう。ただし、冷たい飲み物は避けてください。冷たい飲み物は、身体の温度差を招き、逆に暑さを感じやすくなります。
また、涼しい場所で休憩することは、暑さから身体を守り、心を落ち着かせる効果があります。涼しい場所で休憩するときは、深呼吸やストレッチなどを行うとより効果的です。深呼吸やストレッチは、筋肉や神経の緊張をほぐし、リラックスホルモンの分泌を促します。涼しい場所で休憩するときは、音楽や本などで気分転換するのもおすすめです。
加えて、まだ5月なのでエアコンの使用などをためらいがちですが、気温に応じてエアコンの利用もしましょう。先ほどの研究のように30度を超えるとパフォーマンスが落ちますから、28度以下くらいがおすすめです。

2. 暑さについて共感しあい、コミュニケーションツールとして使用する
天気の話というのは雑談のアイドリングとしてよく用いられるものですが、この異常な暑さについても「今日は暑いですねー」と声をかけ「ほんと暑いですよねー」と返事をもらうだけでも相手との共感の体験となり仲が深まったり、会話にきっかけになります。特にこの異常な5月の暑さについては、普段話しかけにくくて話していなかった人に対しても自然に話すきっかけとなります。

3. 暑さに対するポジティブな思考を持つ
上記の2と関連しますが、暑さに対するポジティブな思考を持つことは、心理的変化に対抗する力になります。暑さに対するポジティブな思考とは、例えば、「暑いけど夏だから楽しもう」「暑いからこそアイスクリームが美味しい」「暑いからこそ汗をかいてデトックスできる」などです。暑さに対するポジティブな思考を持つことで、気分が明るくなり、ストレス耐性が高まります。

以上が、私がおすすめする暑さによる心理的変化への対処法です。暑さは避けられないものですが、上記のポイントを実践することで、心も身体も快適に過ごせるようになると思います。皆さんもぜひ試してみてくださいね。



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