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2人で散歩をした日のこと


起きたら朝の8時だった。


目をうっすら開けると、隣でスマホを見ている彼が見えた。寝ているふりをして抱きついてみると、彼が頭を撫でてくれる。優しく優しく、起こさないようにと大きい手が何度も私の頭を通っていく。この優しさが好きなんだよなあ、と顔が思わずほころびそうになるものの、起きたらやめてしまうかもしれないと我慢した。


今起きましたという顔で、おはようと言うと、目じりを下げた彼が返事をした。その返事も優しさで溢れていて、なんだかくすぐったくなった。




彼が好きなニュース番組のスポーツコーナーを見ながら、昨日買ってあったパンとサラダを食べる。彼が豆からひいたコーヒー付きで。お米パンを久しぶりに食べたけど、もちもちしていて、やっぱり美味しかった。口に広がるさつまいもの甘みが、心地いい。
「え、めっちゃ調子いいじゃん!」と推しの選手の活躍を見ながらはしゃぐ彼を横目に、豆パンも食べた。彼が持ってるチョコクロワッサンを一口もらえないかなと考えたりするのも、なかなか楽しい。


今日は日曜日だ。


市外に住んでいる彼は、金曜日の夜に私の家に来て、日曜日の夜に帰っていく。土曜日は外でデート、日曜日は家でのんびり過ごすのが、私たちの定番の週末だ。


いつも通り、たまった洗濯や掃除を片付け、ゆっくりお茶を飲みながら、ふと窓の外を見てみる。差し込む日差しの明るさ、透き通るような空の青さが目に入ると、だんだんとわくわくしてきて、「ねえ、散歩行かない?」と聞いてみた。ゲームに夢中になっていた彼が、「え、いい!行こ!」と明るい声で答えた。どうやら対戦が終わってちょうどいいタイミングだったらしい。



いざ出発してみると、暖かい日差しに包まれた。
それでも春本番とはいかないのが北海道。風が吹くと肌寒い。
手をつないでゆっくりと歩き出した。


足を動かしながらでも、私たちのおしゃべりは止まらない。「そういえばこの前仕事で後輩がね」「あ、インスタで見たカフェがすごく美味しそうでさ」「今の自転車めっちゃ早くなかった?」と口を動かし、あっという間に30分以上歩いていく。時間が過ぎていくのが本当にあっという間だ。



目的地にしていたカフェは、満席で、待っているお客さんもいた。諦めて別のカフェを探し、また10分くらい歩いた。


前から気になっていたところに入れて、ちょっとラッキーだったかもしれない。

2人でコーヒーと、ガトーショコラと黒ごまチーズケーキをそれぞれ頼んだ。「一口食べる?」とお皿を渡し合い、美味しいと目を合わせる。お皿を返すときに、お互いにありがとうと言う。互いを気遣えていることが分かって、すごく居心地がいい。カフェで過ごす1時間は本当にあっという間だった。


ガトーショコラ🍫





私は前に書いたように、散歩したいなと思っていたからこそ、2人でできたことは本当に楽しかったし、日曜の午後に歩いてカフェに行くなんてなんだかワクワクして、最高にいい気分になれた。
彼は日頃仕事が忙しく、「寝ようと思えばいくらでも寝れる」と言っていたから、「無理しなくていいよ」と声をかけたけれど、「でも2人で散歩したい…」と答えた。心がじわ〜っと温かくなって、思わず笑ってしまったのも今思い出せる。



この日は夕方にかけて風が強くなってしまって、帰りは耐えきれずに電車を使ってしまったけれど、春が深くなって、もっと暖かくなったら、散歩して家に帰ってみたい。


その時、私たちは疲れてしまって、昼寝をしてしまうだろうな。起きたら夜の7時とか、ありえる。でもそんな過ごし方をしても、楽しんでるんだろうなと思う。絶対にそうだ。



散歩をした日、こんな何気ないことでも、すごく幸せだ。


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