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『荻窪メリーゴーランド』はいくつか世界線があるのではないかという解釈

※めっちゃネタバレしてますのでご注意ください。

かつてWEBサイト「OHTABOOKSTAND」で連載されていて、書籍化もされた『荻窪メリーゴーランド』。連載時から追っていて自己流の解釈もしていました。ネタバレになるとアレだし、書籍化してからnoteに書こうかな、と思っていたら予想外というか予想以上というか著者ご本人様ががっつりストーリーを説明してくださっているんですよね。なんてありがたいんだ……。わたしは考察厨ではあるが答えがもらえるなら喜んで答えをもらうタイプだ。なので今のわたしは答えを知っています。その上で、答えには触れないで、答えを知る前にわたしが思っていた解釈を「こういう読みしてました~」って出す記事です。答えが知りたい方は特装版を買ってください。もしくはトークイベントへどぞ。木下さんの手書きのすげー資料がもらえました(今後ももらえるかどうかは分からないけど)。


さて、ここからはわたし個人の解釈です。


出会い~恋人になるまでは共通

8章「恋愛は羽で数えよ」

すべての世界線で共通です。K(木下さんの方の男性)がS(鈴木さんの方の女性)の財布を拾って出会い、二人は恋人になります。


幸せルート

9章「妖精に生まれ変わるのはきみだろう」

他の世界線と区別するために数字をつけて木下さんの方の男性をK-1、鈴木さんの方の女性をS-1と名付けます。幸せルートへ行った二人です。二人は子猫を飼って幸せに暮らしています。

ぼくたちが兄妹である世界線なんてへし折るほど抱きしめる

P161 木下龍也

この歌があるからいくつか世界線ある説を考えました。ファンタジーですが大真面目に考えてました。よかったらしばらくお付き合いください。
初めて読んだときはこの二人、K-1とS-1が兄妹なのか?と思いましたけど、そうではなくこのK-1とS-1は前に兄妹ルートを経てその記憶を持ったまま(記憶を持っているのはK-1だけかも)ループした後の二人だと思いました。つまり『荻窪メリーゴーランド』には書かれなかった話としてKとSが兄妹の世界線も存在していた、とか。(普通にループとか言い出しましたけどわたしは『荻窪メリーゴーランド』を複数の世界線がある+ループがあると思ってましたのでね……そういう感じで進めていきます……)

カップルをゴールテープのように切りながらまっすぐ歩く青年

P165 木下龍也

これは後に出てくる7章「皮膚のぶんだけ遠いと思う」

まっすぐに歩くと決意するだけで他者はたいてい避けてくれるね

P117 木下龍也

と呼応してると考えます。7章のこの場面は事件が起きる直前で、場所は渋谷スクランブル交差点です。9章も同じ場所なので、9章のK-1とS-1は7章と11章で起こる別の世界線の自分たちの事件を目撃した、もしくは事件前にすれ違ったと考えます。で、世界線がちがうとそれが別の世界線の自分だって認識しないんですよね、たぶん。普通に他人に見えている感じ。
なので9章のK-1とS-1は特に事件が起こることがなくいちばん幸せになったルートです。


海デート~クリスマスデートすっぽかされは共通

1章「くちづけるとは渡しあうこと」
2章「〈永遠〉で終わらせるしりとり」
3章「恋に埋もれてうつむいている」

9章とは別の世界線です。K-2とS-2と名付けます。このあとに世界線がずれますがここは同じです。


同棲開始~幸せルート(K-2とS-2)

4章「きみのこの世のまぶたを舐めた」
5章「夜がぼくらに手こずっている」
6章「きみにはぼくを生きてほしくて」

S-2を軸に考えていきます。5章以降に出てくるこわいKはとりあえず考えないでください。こわいKはK-3として後で別に考えます。S-2だけを追っていくと恋人であるK-2と同棲してトイプードルを飼ってK-2のお母さんに挨拶してK-2と誕生日も一緒に過ごしてとにかく順調に幸せです。そう、事件が起こるまでは。事件のことは後でまとめて書きます。


浮気目撃~心が壊れる(K-3)

10章「おそろいのコップがひとつ欠けていて」
5章「夜がぼくらに手こずっている」
6章「きみにはぼくを生きてほしくて」

(4章の扱いが難しいのですがこの世界線の二人は同棲は考えていたけどしてなかったという感じでいこうと思います)
10章で浮気をしたのがS-3、それを見て心が壊れたのがK-3と名付けます。K-3は心が壊れてSの幻覚と暮らします。この幻覚のSは1章、2章、3章の恋人だったころのSなのでS-2です。S-3は今後出てきません。K-3は浮気するS-3のことを受け入れられなかっただろうから。K-3は子猫を飼っているので、トイプードルを飼っているK-2とは明らかに別です。K-3はもうS-2と別れているのでS-2の誕生日にLINEしても当然無視されます。そこで現実が襲い掛かってきて怒りを覚える。


事件

7章「皮膚のぶんだけ遠いと思う」
11章「二度目のはじめましてをしよう」

さて事件です。登場人物は包丁を持ってるK-3、そして恋人同士であるK-2とS-2です。世界線が混ざり合ってしまった。接触してしまったゆえに起こった事件。

ふれようとした手をだれかわからない奴に払われ夢かと思う

P127 木下龍也

これはK-3の歌で「だれかわからない奴」というのがK-2、つまり別の世界線の自分だった、けれどそれに気づいていないと解釈します。K-3は包丁を持っていてS-2を刺そうと思うけど結局刺せなかった。

刃をわたるひかりが君と君を結び刺すことは刺されることだった

P195 鈴木晴香

S-2の歌。「『君』と『君』」というのが恋人であるK-2と包丁持って刺そうとしてきた元恋人のK-3のことなんですけどすごくフラットに書いててなんだか同一人物っぽい感じを受けます。「刺すことは刺されることだった」というのも同一人物感。

脇腹が鋭利に熱いままの夜そうか退場するのはぼくか

P199 木下龍也

K-3の歌。退場するのはK-2ではなく自分。この辺りはK-2とK-3が本来同一人物で別の世界線の二人ってことをK-3もS-2もなんとなく分かってる感じがあります。


SはKと幸せになりたい

エピローグはループするS-2だと思います。事件でS-2の恋人のK-2はK-3を刺してしまう。このままじゃ幸せになれない。だからループしてやり直す。別の人物と幸せになろうとは思わない、Sはそれがどんな世界線であってもKと幸せになりたいのだから。



という解釈でした!ん?本編を読んでいけば矛盾たくさんあるじゃないかって?ははは、すみません。答えじゃないのでね……。答えを読みたい方は特装版読んでね!(2回目)
でも一応こんな風にも考えられるんじゃないかなー。ループ説でいうと、

参列者めいたぼくらが砂浜で見上げる月は喪主めいている

P15 木下龍也

1章のこの歌は事件後にループした(Kもループしてる)ように思えるし、

私だけ結末を知っている本のどこまで話してしまえばいいの

P29 鈴木晴香

2章のこの歌もループして結末を知っているようにも思える。『荻窪メリーゴーランド』はループ前(1回目)とループ後(2回目以降)の歌が混じってるとかね……。

読み方は自由と木下さんも鈴木さんもおっしゃっていましたので甘えて答えを知る前に考えていた自己流解釈を書かせていただきました。

読んでくださった方、ありがとうございました!


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