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読んだ歌集のミニ感想まとめ

Xでポストした読んだ歌集のミニ感想のまとめです。他にもたくさん読んでるのですがとりあえず感想書いてたぶんを。
タイトルにリンク張ってます。どの歌集も本当にいいのでみなさんもぜひ読んでみてください!

個別に感想を書いたものはこちらからどうぞ↓




あなたのための短歌集 /木下龍也

(2022年9月)1ヵ月程前、心身共にぼろぼろで本当に辛かったときに出会った歌集。読みながら泣いて泣いて少しだけ楽になった。好きな短歌はたくさんあるけどこの短歌は特に好きでこれからもお守りにして生きていきたい。

死者たちは重石をくれる大切なあなたが追ってこないように、と

『あなたのための短歌集』084番


オールアラウンドユー /木下龍也

雨のせいか微妙に頭が痛いので横になってゆっくりと木下龍也先生の「オールアラウンドユー」を読み返していた。ハッとする歌やさみしい歌もあるけれど全体を通してはやさしい歌集という印象。すっと心が楽になるような。

生きてみることが答えになるような問いを抱えて生きていこうね

『オールアラウンドユー』P74


つむじ風、ここにあります /木下龍也

怖いくらいに冷静に淡々と世界を描いていた。内容が衝撃的で怖いというよりはそれを淡々と書いてるのがこえーよお…という感じ。コミカルな歌や優しい歌もあるけれど今はしんどい歌が印象に残ってるなぁ。おもしろかったです。


きみを嫌いな奴はクズだよ /木下龍也

思わず噴き出しちゃうようなおもしろ短歌と神や戦争や死を詠んだ重い短歌の温度差で風邪ひいちゃう…。すごかったです。恋愛の短歌好きだなぁ。最後の短歌は「つむじ風、ここにあります」と繋がっててうおお…!ってなった。あとがきの物語つっら…好き…。
わりと装丁の印象通りの歌集だった。なんかこう…強い…。一首一首がそうだし通して読んでもそうだし。インパクトが強い感じ。
『つむじ風、ここにあります』と『きみを嫌いな奴はクズだよ』は近い感じがあるけどこの2冊と『オールアラウンドユー』は全然ちがう感じがある。どの歌集も好き。


サイレンと犀 /岡野大嗣

めちゃくちゃ良かったです!やっぱり私は岡野さんの短歌大好きだ…。死についてとかインパクト強いの多くてしんどくて、でも岡野さんらしい優しい短歌もあって救われます。装丁も中身のデザインも良かったなぁ。挿し絵もかわいかった。
岡野さんの本は『たやすみなさい』→『音楽』→『玄関~』→『サイレンと犀』という順番で読んだのだけど、玄関~を読んだときに岡野さんこういう短歌も作るんだ、物語歌集だからかな?と思ってたけどサイレンと犀は玄関~の温度と近くて、ああ繋がってるんだなぁって歴史とか流れとかを感じました。


たやすみなさい /岡野大嗣

ほんとにいい歌集だなぁ。誰もが感じたことがあるような寂しさとちいさなちいさな喜び。日常をものすごく繊細に拾った歌集。装丁かわいいし挿絵もかわいい。デザインもすごく凝ってて素敵。でかい「ニトリ」好き。

経って知る訃報みたいに見つけたよ飛行機雲のほつれるところ

『たやすみなさい』P136

この歌がすごく好き。訃報を時間が経って知るということは主体は亡くなった人と近しい人物ではなかったんだろうなって。たとえば昔のクラスメイトとかを人づてにあいつ亡くなったんだよって聞くような。それですごく寂しくなった、ときのように飛行機雲のほつれるところ、消えかけているところを見る。共通するのは「置いていかれた」感覚。もう自分にできることはなくて寂しさを抱えている歌だと思う。切なくて好き。歌集『たやすみなさい』での表記もいいよね。


今日は誰にも愛されたかった /谷川俊太郎・岡野大嗣・木下龍也


おもしろかったー!谷川さんと岡野さんと木下さんによる連詩。感想戦も収録されててどういう思いで作ったのかとか読んでどう思ったかとかも分かる。エッセイもめちゃくちゃ良くて満足感がすごい。

四季が死期にきこえて音が昔にみえて今日は誰にも愛されたかった

『今日は誰にも愛されたかった』岡野大嗣

『今日は誰にも愛されたかった』を読む前から知ってた短歌ですごいなと思ってたけど『今日は誰にも愛されたかった』の本人解説を読んでさらにすごいなと思いました。誤作動の歌なんですね。
谷川さんが『玄関~』を読んでたから木下さんと岡野さんのことを高校生だと思ってた話好きだし、電柱を抱く岡野さんの話も好き。
谷川さんめちゃくちゃかっこよかったな…最初から最後まで…。木下さんと岡野さんの短歌はウワーやっぱり好きだーってなるんだけど谷川さんの詩はくっと背筋が伸びるかっこよさだった。


ひとさらい /笹井宏之

数カ月ぶりに読み返した。前に読んだときは短歌を読みはじめてすぐで「わ、わからん……(困惑)」だったのだけど、今読むと「わからん、でも好きだ」とか「わからんけどなんかいい」とかで、たぶん短歌に触れてきたからこの感覚にたどり着けて、それはすごく良かったなぁって。わからないなりにすこし解釈してみたり、わからないけどなんだか好きだなと思ったり。そういうのでいいんだよね、たぶん。今日読んで好きだった歌は、

にょりという歯応えのある果物を農家の方にいただきました

『ひとさらい』P44

でした。にょり…どの果物だろう…新種の果物かもしれない。


花は泡、そこにいたって会いたいよ /初谷むい

ふしぎな世界に旅をしてる感じで心地よかったなぁ。短歌って自由なんだと思いました。すごく素敵でした。

快晴がつくる逆光きみの名を一生覚えている気がするな

『花は泡、そこにいたって会いたいよ』P107

せんせいの元恋人のなまえだけど元素記号よか覚えちゃってさ

『花は泡、そこにいたって会いたいよ』P112


コンビニに生まれかわってしまっても /西村曜

読みながらなんとなく同世代かも…?って思ったらやっぱり同世代の方でした。最初は優しい歌が多かったから表紙の印象とちがうな?と思ったけど途中からは苦しみを強く感じてしんどかった。それでも生きていく強さも感じました。すごかった。

「smileの綴りはスミレとおぼえてた」どうりでそんなふうに微笑む

『コンビニに生まれかわってしまっても』P26

テロ等の<等>に僕らは含まれる雨に打たれてキスをしたから

『コンビニに生まれかわってしまっても』P50


わたしの嫌いな桃源郷 /初谷むい

基本的にわからんなんだけどそれでもなお胸に迫るものがあって反射的にぶあっと涙が出る歌もあって。好きだなぁ、初谷むいさん。あとがきを読んで何でこんなに胸を揺さぶられるのか少しわかった気がした。世界の捉え方なんだなぁ。すごくいい歌集でした!


乱反射 /小島なお

読む前から絶対わたし好きなやつだよと思ってたけど案の定めちゃくちゃ好きだった。純粋でまぶしい。日常の些細なきらめきを掬い上げてる歌集。これから何度も読むだろうな。

もう二度とこんなに多くのダンボールを切ることはない最後の文化祭

『乱反射』P29


永遠よりも少し短い日常 /荻原裕幸

胎動短歌vol.3の歌が好みで歌集を読んでみたらやっぱりすごく好みだったからうれしかった。表現が美しいなぁ。「平成群青クロニクル」も楽しかった。

永遠とか言つてた口をとりかへもせず菜の花のパスタを食べる

『永遠よりも少し短い日常』P52


たんぽるぽる /雪舟えま

ふしぎな歌もぱっと意味がわかる歌もどちらもいいなぁ。きゅんとするような恋愛の歌が特に好きでした。

きみ眠るそのめずらしさに泣きそうな普通に鳥が鳴く朝のこと

『たんぽるぽる』P24

この歌だいすき。


これからもいろんな歌集を読んでいきたいと思います!


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