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よその国の話ではない食料危機と食品ロスについて学ぼう

世界の食料危機の現実

飢餓をなくすことは、SDGsの目標の1つです。国際協力NGOハンガー・フリー・ワールドは、飢餓とは「長期間にわたり食べられず栄養不足になり、生存と生活が困難になっている状態」であり、自立の支援が必要だとしています。

2020年の段階で、世界の中に飢餓で苦しむ人は最大8億1,100万人いるとの調査があります。その数は、日本の人口の6倍以上にのぼり、世界の10人に1人という割合です。FAO(国連食糧農業機関)などの発表によると、2020年の飢餓人口はアジアが4億1,800万人ともっとも多く、次いでアフリカが2億8,200万人でした。アジアでは紛争による食料危機が深刻で、アフガニスタンでは国民の9割が十分な食事をとれず、シリアでは国民の6割が飢餓状態にあります。WHO(世界保健機関)の報告によると、5歳未満の子どもの死亡原因の45%が栄養不良に関連しています。

日本も、食糧危機と無縁ではありません。飢餓に苦しんでいる人こそ少ないかもしれませんが、2020年度の食料自給率は37%と、日々の生活で必要な食料のほとんどを外国に頼っています。気象変動や国際情勢など、何らかの理由で食料の輸入ができなくなったとき、1億2,000万人分の食べものを国内生産でまかなえるのでしょうか。

◆POINT
世界の10人に1人が飢餓で苦しんでいる現在。食料自給率の低い日本に暮らす私たちも、食料をめぐる現実を知るべき

食料危機はなぜ起きるのか

なぜ、飢餓が起こるのでしょう。現在、世界では年間26億トンの穀物が生産されていて、地球上の人に平等に分配されれば、食料危機の心配はないはずです。
1998年にノーベル経済学賞を受賞したインドのアマルティア・セン氏は、「たとえ十分な食料があっても、貧困や紛争があれば食料を入手できる権利や能力を失い、飢餓が起きる」と主張しました。また、飢餓問題の研究者であるジャン・ジグレール氏は「豊かな食料が公平に分配されていないことは、現代社会が抱えている一番の欠陥ではないだろうか」と述べました。つまり、いくら食料があっても、それを入手できる社会にならなければ、飢餓は起きてしまうのです。
一方では、本来食べられる食品が捨てられてしまう「食品ロス」の問題が生じています。日本では2018年の段階で年間600万トンと、東京都民が1年間食べていける量の食品ロスが生まれています。日本だけではありません。FAOは、世界の食料生産のうち3分の1が捨てられていると報告しています。食品ロスは世界全体が取り組むべき社会課題なのです。
「食品ロスは企業のせい」という意見を耳にすることがあります。しかし、2018年度の日本における食品ロスの内訳は、家庭からが46%で企業からが54%と、ほぼ半々の割合です。消費者が原因で企業が出してしまう食品ロスもあります。例えばスーパーで、「同じ値段なら日付の新しいものを」と、棚の奥から商品を選ぶことはないでしょうか。手前の商品が売れ残ると、いずれは食品ロスとなってしまうのです。

◆POINT
食料危機は国際社会の欠陥として考えるべき問題。私たちも生活の中で食品ロスを減らす意識を持つ必要がある

食料危機を解決するには

食料危機は世界レベルの課題ですが、その解決のため、私たち個人ができることもあります。

1.消費期限と賞味期限の違いを理解

食品ロスが減らない原因のひとつとして、著者の井手氏は「消費期限」と「賞味期限」についての知識不足を挙げています。「消費期限」とは、刺身や弁当、低温殺菌の牛乳など、日持ちがおおむね5日以内の食品に表示されます。これらは品質が劣化するのが早いため、消費期限を守って食べることが推奨されます。一方、「賞味期限」とは、上記以外のほとんどの加工食品に表示されます。賞味期限とはいわば「おいしく食べられる目安」のことで、たいていの食品では短めに表示されています。賞味期限を過ぎていても、ほとんどの食品は食べられるのです。

2.食品ロスを減らす努力をする

食品ロスは、気候変動問題にも大きく影響しています。廃棄された食品を燃やせば二酸化炭素が発生し、埋めれば二酸化炭素の25倍以上の温室効果を持つメタンが発生するのです。家庭では食べきれる分だけの食料を買い、食べられる分だけの料理をするなど、個人でも食品ロスを減らす努力をしましょう。食品を長持ちさせるための保存法を学んだり、食べ残しなどの重さを測って食品ロスを「見える化」したりすることも効果的で

3.食べものをシェアする

食品ロスを減らすために、食べものをシェアするという方法もあります。日本で一般的なのはフードバンクです。フードバンクは、家庭で余った食料や購入した食料を引き取り、福祉団体や施設、個人へとシェアする役割を担っています。2021年の段階で、北海道から沖縄まで150以上の団体が活動しています。地域のフードバンクを調べてみましょう。

◆POINT
食料危機は食品ロスの処理に生じる温室効果ガスによっても引き起こされる。食品ロスを減らすことが食料危機を救う第一歩となる

  • ※参考文献:『食べものが足りない! 食料危機問題がわかる本』(井出留美著/旬報社)2022年1月出版

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