見出し画像

すれ違う人全員にそれぞれの人生があるのヤバすぎ

この間、新宿武蔵野館で映画を観ようと思って新宿を少し歩いた。駅から映画館までは数分歩けば着く距離だったし、新宿武蔵野館には何回も行ったことがあるけれど、全然普通に迷った。何回も立ち止まった。とてつもない方向音痴だった。ここがビックロでしょ、で右に紀伊國屋が見えるから、ここを左に曲がったらZARA、ZARAに着いたらもうほぼ新宿武蔵野館に着いたようなものだよな、あれ、でも看板見えないな、あ、ここ右に曲がってもっと進むんだっけ?いやでもここにたしか入口が、、そんなことやってるうちに、ふと、あれ、今日はなんだかいろんな人の会話が聞こえるな、と思った。当たり前だった。久しぶりの外出でAirpodsを充電し忘れていたせいで、その日は一人での外出ではかなり珍しく、イヤホンをしていなかったんだから。しかも世の中はお盆モードで、いつもより人が多い。夏休み。お盆。新宿のど真ん中。ものすごい数の人とすれ違った。嫌でも他人の会話が耳に入ってきた。

「ねえ待ってw本当に嫌!まじでむりむり!」

「ねえここにする?めっちゃ普通に居酒屋だけど、良い?一旦入ってみる?」

「うちに使えない吉田っていうのがいてさあ〜」

みんなすごい喋ってた。しかも喋ってる内容がめちゃくちゃクリアに聞こえてきた。いつもすれ違ってる人たち、みんなこんなに喋ってたのかとびっくりした。それと同時に、いつも 人混み として認識していたかたまりが、ひとりひとりの人間の集合体であることに気付いた。そんな当たり前のことに、25歳にして気付いた。そしてそれはつまり、ここにいる全ての人に、それぞれの生活があって、その延長線上で、今ここにいるということか、と驚愕した。え、さっきでっかいスーツケース持って歩いてた女の子二人組にも、大戸屋が満席で並んでるっぽかった成人男性も、こんなクソ暑い日にスーツにジャケット羽織ってるあのおじさんも、みんなそれぞれの生活があるってこと?え、じゃあもしかしてなんだけど、この世ですれ違う人全員に、それぞれの人生があるってこと、、?それってなんか、あの、ヤバ、、、

そういえば先週、大好きな映画を見返した。原題は『En man som heter Ove』、直訳すると、『オーヴと呼ばれた男』。
この映画の主人公オーヴは、頑固で、堅物で、偏屈なおじさん。この映画は、そんなオーヴがスーパーで店員にクレームを入れるシーンから始まる。ここだけ見ると、オーヴはわたしたちが人生でたまに、いや、かなり頻繁に遭遇する、「うわ、このおじさんだる〜」ていうタイプのおじさんでしかない。クレームの内容もほぼいちゃもんだし、口も悪いし。だけど、オーヴはその後、そのスーパーでいちゃもんをつけながら購入した花を持ってひとりで墓地に向かう。そして、最愛の奥さんが静かに眠るお墓に向かって話しかける。「寂しいよ」。

これが映画じゃなければ、わたしたちはスーパーでクレームを言うおじさんを見かけた瞬間、一瞬でその人を嫌な人だと決めつけて、なんなら想像で、その人の生きてきた人生まで否定してしまうと思う。そしてその人との関わりは、そこで終わる。そんなこと、これまで数えきれないほど経験してきた。だけど、あの時なんなのって思ったおじさんも、物分かり悪いなあって思ったあのおばさんも、あの人もこの人も、当たり前だけど皆それぞれの人生を歩んだ先でわたしたちとすれ違ってるわけで。もしかしたらここに来るまでの間に、その人たちは、自分の命よりも大事と思える誰かに出会っていたり、愛しくてたまらない人を失っていたり、するのかもしれない。さっき駅のホームでぶつかってきたあの人も、わたしとぶつかった後に、もしかしたらどこかで、誰かを抱きしめてるのかもしれない。

まあだからと言って何もかも許容しようとかそんなつもりは一切なくて。もちろん世の中には嫌な人はいっぱいいるし、ひとりひとりのバックグラウンドなんて、関係ないって時もある。それでもなんか、これまで顔も見ずにすれ違ってきた人たちも、電車でたまたま隣に座った人たちも、ビックロの前で座り込んでたあの人も、きっとこれまでの人生のどっかで、死ぬほど辛いこととか、動けなくなるくらい悲しいこととか、そういうことを経験してるのに、何にもないみたいに今こうやって、通行人Aみたいな顔して生きてるのかなって、そんな風に、ふと思ったりして。まあだからなんだっていう話ではあるんだけど、とりあえずわたしはあの日たしかに、新宿のど真ん中で、ふと、みんなのことを想像したくなりました、という、そんな話でした。わたしはあの日、あなたがこれまで見てきたものも、飲み込んできたものも、これから出会うものも、なんだか少しだけ、想像してみたくなりました。

まあ最終的に何が言いたいかって言うと、世界には人の数だけ人生があるということ。そして、それの約20倍、指があるということです。指、多すぎ、、、、


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?