2.柔らかな言葉が踊る「こくぼさおりさん」 #届ける座敷童子
見たものに幸運を届けると伝えられている「座敷童子」。
noteという街のとっての座敷童子になりたくて、今回はこっそりこくぼさおりさんのところへお邪魔してきました。
書き手の魅力3選
わたしが読ませてもらった記事の中から、ぐっときた魅力的な記事を3つ紹介させてください。
さおりさんの自己紹介&はじめてnote。
まるで動き出すような、ふたりで踊るワルツに誘われているようなリズムのある文章で綴られる「さおりさん」という人。わたしの「自己紹介とは」という概念がさらさらと砂になっていった記事でもありました。
わたしの中に、ちっさな女の子がいて。
「うっわー。きれいだー。」と見えるものに、きらきら心震わせていたり、
「怖いよー」と言っていたり。
ほんとはAラインのワンピース着たいとか思っていたり。
ねえねえ、それでほんとに良いの?と思っていたりする。
こんな素敵な自己紹介があるかしら、と思いました。自己紹介って自分の肩書とか経歴とか、そういうものばかり思い浮かべるけれど、さおりさんの文章はこんな書き出しで始まっている。それが文章以上に考え方の柔らかさというか、ものの見方の楽しさがありました。
「人は見たいように見ているし、どこまで出すのか。その出し方さえも、その人のあり方だよね」そう話す人と結婚した。
この部分も、決して箇条書できるような手に取れるものではなく、さおりさんだけに見えている「その人」の像が浮かび上がっているところが素敵。
さおりさんの自己紹介記事は、「肩書」や「経歴」ではなく彼女の考え方やものの見方を通してさおりさん本人を見せてもらっているように感じる。小さい頃はこんなふうに友達と仲良くなったっけ、と思い出すようなその感覚に親近感が湧いてしまう。
それなのに、
全出し。自己開示。なんてのは、わたしの中の辞書にはなくて。
内と外を出入りしながら体験していくの。
なんて言うから、ますますさおりさんという人がわたしは気になってしまった。もう少し一緒に踊っていたい、なんて思わせてくれました。
自分の感情をおろそかにしないってことを大切にしたい。
感情を感じること。感じることは出せるタイミングだから。
好きも嫌いも、嫌だもすべてわたしのものだ。
「何も言えない」と思ったら何も言わなくてよいの。
もともとあった感情を引き出すために物事は起こる。
この考え方が好きで採用している。考え方は好きに採用すればよいの、明瞭簡単でしょ。
引用が長くなりました。でもとっても心にぐっとくる文章なので、ぜひ目を通してもらいたい。
「感じることは出せるタイミング」、「「何も言えない」と思ったら何も言わなくてよいの」のふたつの文章にあらわれる自由さに、やっぱり楽しそうに踊る言葉だなあと思いながら読みました。
わたしは書くことが好きだけど、時々うっかりしていると書くことを「やらなくちゃ」と思ってしまうことがある。自分の中にネタを探して(すぐに見つかることもあれば難産になることもある)、絞り出すようによなよな書いていたりする。それが決して悪いことではないけれど、そればかりでは何か縛られれているような気持ちがする。
無理をしない、それは陰の方向でも陽の方向でも変わることがなく、そのままの自分でいることを自分が一番大切にしてやらなくちゃいけない。そう語りかけられているような気がしました。
また最後にお気に入りの文章を引用します。
天国には最も愛している2人づつでしか入れないとしたらあなただったらどうする?
その答えを文字だったり絵だったり映画だったりで表現したいから、わたしは生きている。
答えはもうすでに心にあるのだから。
最後にさおりさんの書く物語について紹介させてください。
さおりさんの踊るような言葉で綴られた物語はどんなだろう、と考えていました。自由さとか、ゆたかさとか、そういうものを思い浮かべていた中で心をぎゅっと掴まれたのがこちらのショートショートでした。
黒色の服を好んで選ぶ私だけどそれは対外的な姿でもある。
家の中の寝る時の姿、パジャマは淡いブルーやペールグリーン。
淡い柔らかい色味に包まれて、まにまに過ごすことが好き。
誰にも見せない、素のままの姿。
外では黒をまとう女性。でもたったひとりの姿は淡く、優しい色をした女性。その使い分けに不自由さを感じているかと思えば、どうやらそうではないようす。
こうであると決めつけることは簡単だ。
そう言われたいがために見せる顔というのだってあるだろう。
それと同じくらい、人には見せない部分だってあるのだ。
彼女にとって「黒」と「そうでない色」との使い分けは、自由そのものでもあるような、そんな明るさを感じました。「人からはこう見られたい」とあえて黒を選ぶ強かさ、ただ楽しく自由なだけではない芯の強さのあるイメージ。
わたしが読ませていただいたエッセイとつなげて読むなら、この物語の主人公はさおりさんにしか書けない女性像だと感じました。からりと陽気で、ときどきは落ち込んだりするけど、自分の真ん中はいつでもちゃんと守られている、そして自分で選び取れる自由をいつも胸にいだいている。そういうかっこよさ、惚れてしまいそうです。
終わりに
こくぼさおりさんという書き手の文章は、読むごとに驚くほど手に馴染む心地がします。
はじめてのワルツを一緒に踊り、練習するごとにぴったりと息があっていくような気持ちよさがあって、週に一回だった練習が2回、3回と増えていって、最後には毎日の日課になるようなやみつき度の高い言葉たちです。
ただテンポが良いとか読みやすいとかではなく、無理をせずとも自然と前を向かせてくれるような、体温よりも少し高い明るさが心地いいのです。
あとがきという名のファンレター
紹介は前段までで終わり、ここからはわたしからさおりさんへ向けた個人的なファンレターです。
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わたしは人見知りで自分からは「こんにちは」と言えない方なので、声をかけてくださった人やわたしの記事をシェアしてくださった人のことは嬉しくってよく覚えていました。さおりさんの名前も、ありがたいことにそうして覚えていました。
自分の文章表現は、それほど個性のあるものではありません。世界観を作り上げるほどの力もまだありません。だけどさおりさんの文章には、なんだかそういう力を感じています。するりと読めてしまうようで、どこか繰り返し口ずさみたくなるようなとっかかりもある。そういう部分に魅了されて、いくつかの作品をざくざくと読ませて頂きました。
これからも楽しみにしています。
作品を閲覧していただき、ありがとうございました! サポートしていただいた分は活動費、もしくはチョコレート買います。