マガジンのカバー画像

月刊 撚り糸

100
毎月7日にテーマに沿った小説を公開します。また同テーマにて創作を募集し、一緒に楽しめたらと思っています。3月のテーマは『その角を曲がったところに』です。
運営しているクリエイター

#ショートショート

そこにつくる想い|ショートショート #月刊撚り糸

 じわりじわり、とその感情はわたしを浸食した。だれもなにも悪くない。ただタイミングが悪か…

31

お先にどうぞ  #月刊撚り糸 第804話・4.7

「お先にどうぞ」「ああ、これはどうも」  今日も私は、先に急ごうという人を先に譲った。私…

2人の道 #月刊撚り糸 【短編小説】2300文字

仕事用に使っているエルベシャプリエのカバンは淡いラベンダー色だ。 路肩の雪は解けて、コン…

イツキ 彩
2年前
17

その角を曲がったところに #月刊撚り糸 第773話・3.7

「その角を曲がったところに」ここで電話が切れた。「その角を曲がったところにって何なんだ?…

角を曲がったところにあったもの|ショートショート #月刊撚り糸

「ね。別れよっか」  笑顔でそう告げられたとき、俺はとても間抜けな顔をしたと思う。何を言…

27

#月刊撚り糸 2人の境目【短編小説】1900文字

「パパ、おやすみなさい。ママ、おやすみなさい。」 階下からお姉ちゃんのいつもの挨拶が聞こ…

イツキ 彩
2年前
21

窓は開けたままにしておいて  #月刊撚り糸 第745話・2.7

「窓は開けたままにしておいて」と、隣の席からの強めの声が聞こえた。列車に乗り、窓際の座席が空いていたので座る。そこで窓が開いていたからと、閉めようとしたときのこと。  仕方なく列車の窓を閉めるのを断念した。「でも開けっ放しにして寒くないのですか?」その人に聞いてみると。「寒い?それは今の季節が冬だから当然ではないでしょうか」と感情の起伏のない口調で言い返された。「そ、それは」これ以上、隣の席の人に何も言えなかった。  列車は冬の大地を駆け抜けていく。この列車はディーゼル車両

ジョハリ #月刊撚り糸

 ふと目覚めて、隣を見て溜息が出そうになるのを慌てて堪えた。安らかな寝顔と安らかな寝息。…

23

お元気ですか #月刊撚り糸 第714話・1.07

「お元気ですか?」と、夜遅くに笑顔で俺の家にやってきたのは、大学生の甥っ子だ。「ああ、誠…

明けまして #月刊撚り糸

 本当に何年振りかで、年賀状を出すことにした。実家にいた頃は両親が毎年用意するのに便乗し…

23

ずっと前から知っていました (#月刊撚り糸 & #2021クリスマスアドベントカレンダ…

「ずっと前から知っていました。今日ははっきり言います。大輔君、あなたがサンタクロースだっ…

もしも夢が叶わないなら? #月刊撚り糸   第654話・11.7

「そうか今日は立冬か、だからこんなに暗くなるのが早いのね」園代は頭の中でつぶやきながら町…

あちらとこちら、夢のまた夢 #月刊撚り糸

 僕から見て、彼女はいつも『あちらに行ってしまいそう』な人だった。あちらってどこかだなん…

22

明後日は雨だって #月刊撚り糸 第623話・10.7

「明後日は雨だって」窓を見ながらつぶやく妻の声を聞いた夫は、思わずベッドから起き上がった。 「それは本当か? 明後日が雨と言うのは」妻は小さくうなづく。「ええ、先ほど天気予報で確認しました。明日までは晴れるそうだけど、明後日は......」  妻の声のトーンが低くなる。夫は窓から空を見つめながらつぶやく。「信じられん、こんなに雲ひとつないというのに。本当に48時間以内に雨が降ると言うのか!」対照的に夫の声は大きくなった。  夫が見つめる窓の外、雲ひとつない青空が広がっている