種苗法改定をキッカケに、未来に舵を切る#1

種苗法改定の内容が、にわかに話題になっていたので法案と改定案は一通り目を通しました。
現在、空いた時間にちょっとずつ法案と改定案を自分の記録用にまとめています。

僕的なポイントと考え方を書き出していきます。

せっかくなので農業者らしい視座から書きます。
巷間語られる種苗法の議論とは趣向を変えて。

※ちなみに種苗法改定の内容そのものに関してはあまり関心は持てなかったりします。それよりもそこから見えてくる今後の日本国内での農業の潮流を読み間違えないようにしないと、という意識を持つことが大事かと思います。でも内容についての感想、意見もあとで触れてみたいと思います。

まず、大前提としての潮流を押さえます。

潮流1-1. 公的機関から民間へ

種子法が廃止になったことでも分かりますが、公的な機関で育種を行っていくことを手放していく方向です。
公的機関の培ってきた財産は民間からの要請があれば開放させていく方向です。

潮流1-2. 産地間競争から企業間競争へ

民間に開放していくということは自由競争になります。
公的機関が育種している間は行政区での普及が前提となっていました。
僕の本業である苺であれば
栃木=とちおとめ等
福岡=あまおう等
という具合に地域で品種を囲い込み、産地形成をしていきます。
競争は産地間が前提です。

さて、産地間での競争と公設市場の存在は不可分です。
産地というのは一斉に同じものを出荷するものですから、まとまった量が一度に出てきます。基本的に全てを直接販売することは不可能に近いです。
ですから公設市場が荷受け機関となり、大量流通大量消費を支えます。
また、公設市場での価格競争力を形成するために産地を形成する、という側面もあります。
産地形成は、公設市場に出荷することありきの施策と言っていいでしょう。

画像1

ざっくりとこんな感じです。

今は、農協、公設市場共に求心力が低下しています。
そのなかで行政機関の役割も縮小させていくのは抗えないことかと思います。

民間が台頭すると違った形になっていくでしょう。

例えば種苗を民間で開発普及させることがあった場合。
(現に僕が作っている苺のメイン2品種はどちらも民間の品種です。)

①産地形成にはならない
民間企業は、その種苗を使ってもらいたいので地域を限定することはありません。
全国の生産者に勧めていった結果、産地では無くブランドを作り上げる方向に進みます。

②公設市場にも並ばない
産地形成がされなければ物量がまとまらないため、公設市場に出しても相手にされません、という理由もあるのですが…。
せっかく生産者が好んで選ぶ作物ですから、選ぶなりの理由がある場合がほとんどです。その作物を欲しがっている相手がいる、マーケットがある、などです。
なので、どこへ引き取られていくか分からない公設市場では無く、直接取引した方が良いケースが多いです。
何より、わざわざ選んだ作物を作るくらいですから価格だって決めたくなります。
そうすると公設市場には尚更出せません。

③行政機関とは縁遠くなりがち
現場で活躍する行政職員さんは、農業の知識や経験を行政の試験場や産地で吸収します。その産地の特産物があればこそ、行政職員さんも活躍の場が拓かれます。
しかし、十人十色三者三様で生産者が好きな作物を選び、好きに経営していたらアドバイスできるケースは少なくなっていくでしょう。
行政機関で育種した品種でもなければ、産地形成されて地域間にノウハウが蓄積された品種でもない。そうなればお手上げです。

というように、もしも育種、品種が民間に移行していくと上記の産地形成型トライアングルは自然風化していきます。

潮流2. トライアングル風化は時間の問題

それはまずいだろう。産地は大事だろう。
そんな気もするのですが、そうも言ってられません。
産地形成型トライアングルの風化が避けては通れないのは、以下のような経済的事情が絡んでいるからです。

①資材費の高騰
②人件費の高騰
③価格決定権が無い

#2 に続きます。

See you.





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