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わたし百景⑩自動販売機のジュース

仕事終わりに家まで歩いて久しぶりに帰った。

バス代をケチりたかった訳でもなく、
ただなんとなく沈む夕陽を背に歩きたかった。
そんな理由。

でもまだまだ暑さは残る季節。
喉が渇いてカバンを漁ると中には既に軽くなった水筒。
歩いている途中にある自動販売機で足を止め、売っているものを眺める。

500ミリのペットボトルが180円になっていた。私の記憶は160円で止まっていた。むしろ150円の時代さえ記憶に新しい。

ものの値段の高さに驚いたが、喉の乾きは変わらぬのでしぶしぶ自動販売機で飲み物を買う。
その日は仕事で嫌なことがあったので、いつもは我慢しているジュースを買い、せめてもの自分のご褒美にした。
180円で自分のご機嫌がとれるのだ。全然いい。

そういえば、母いわく私が生まれて初めて話した言葉は「ジュース」だそうだ。それも自動販売機を指さしながら。
「ママ」とか「パパ」はよく聞く話だが、「ジュース」から話し始めた方の話は今のところ他に聞いたことがない。

どれだけジュースが好きだったのだろう。
そして生まれて24年経った今も自動販売機のジュースで自分のご機嫌をとっている。

小さい頃からお世話になっている自動販売機。
今後ともよろしくお願いいたします。

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