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「母は現役JW。未信者だった父の葬式、こうしました」#4

「火葬式」が合ってそうだ、とわかった

前回で書いたとおり、葬儀社で葬儀プランの種類についてのおおまかな説明を聞き、あらかじめの希望に合いそうなのは、「直葬」に少しプラスのある「火葬式プラン」だな、ということがわかった。

この葬儀社での「火葬式プラン」とは、
「亡くなった場所から葬儀社まで搬送してもらう。通夜はしない。火葬まで葬儀社で安置してもらう。火葬当日にごく簡略なセレモニー(火葬式)をしてから火葬場に行く。火葬が終わったらお骨を受け取る」となる。

前回、料金のことを書くのを忘れたが
・直葬プラン  約15万円~
・火葬式プラン 約17万円~(ドライアイス代2日分込み)
とのこと。

有料オプションとしていろいろ追加できるので、というかだいたい追加していくことにはなるので、結果的にこの金額では収まらなかったが、基本プランとしての料金はいくらか、何が含まれているのか、きっちり“明朗会計”で提示してくれた。

ちなみにオプションというのは、遺族が遠方の場合に泊まれる部屋(シャワー、テレビ、電子レンジとかあり)付きとか、遺品供養もとか、永代供養もとか、花をてんこ盛りに用意してもらうとか、豪華な棺や骨壺にしてもらうとか、あと何だったかな、とにかくいろいろあった。

例の宗教の問題があるのだ

さて、そもそも事前相談しておかないとなあと思った最大の理由は「母が現役JWだから」なのだが、葬儀社の方の説明を聞きながらも、「どう切り出したものか……」と思っていた。

やっぱ、「エホバの証人なので……」とか言わないといけないのかな?
葬儀社の方はいろんな宗教の人を見てるだろうから、驚かれはしないよな。

とかとか思ってはいるのだが、なぜか、なかなか言い出せず。

そして、ハッと気づく。

あ……これはあれだ、元JW2世のトラウマ、「証言」みたいに感じてるからだ!

違うぞ! これは「証言」じゃないぞ!

気づいたら、言える気がした。

「『火葬式プラン』が希望に合いそうです」と伝えたところ、火葬式プランのもっと詳しい説明が書かれたページを見せてくれて、「この一式も含んでおります」と示された中に、イラスト付きで「線香」「仏衣一式」「お参り用具」などもあった。そこで「言うのはここだ!」と思った。

「これは、『減らす』はできますか? 実は、家族の中に宗教をもっている者がいまして、その宗教でやりたいということではないのですが、どれか特定の宗教の方式でってなるといろいろもめる原因になりそうなので、できるかぎり宗教色なしでやりたいと思っています。なので、線香とか仏衣とかは、ないほうがいいのですが……」
等々と言ってみたところ、葬儀社の方は、即座にハッとして、「察した」という表情になり、うんうん、うんうん、と何度もうなずいていた。

あとから思うと、たぶん、「この人がひとりで事前相談に来たのは、それが理由か……」とわかったのだろう。

「その宗教とはエホバの証人です!」も、聞かれたら言う気満々だったのだが、とくに聞かれなかったので、言っていない。
そういえば、実際の葬儀が終わるまでも、最終的に一切聞かれなかったなー。「仏教の知識があんまりないので、この『お参り道具』が具体的に何を含むのかよくわからなくて」みたいなことは言った気がするので、「キリスト教系のどれかだろう」「ってことはアレか?」くらいのことは思われていたフシはあるけれど。

葬儀社の方は、尋ねたことはきっちり答えてくれるが、余計なことは聞かない・言わない感じで、そこはさすがだなと感心した。

「事前相談」で来ているので、「申し込み」ではないし、つーか父親もまだ死んでないが、パンフレットだけもらって帰るほどの“先のこと”でもない時期だったので、「見積もりを」とお願いした。

あ、さっきの「一式」からなにか減らすのは全然問題ないとのことだった。ハンバーガーの「ピクルス抜きで!」とおんなじだ。「ピクルスを入れないからといってピクルス分を値引くことはできませんが、ピクルスを入れずに作ること自体は可能です」だ。

お参り道具がないとさびしい感じにはなるので別料金の花を加えてもいいかもしれないとのアドバイスがあり、それはそうだなと思ったので、見積もりに「花いっぱいセット」みたいなものをプラスしてもらっておいた。安置している部屋に写真や故人が好きだったものを自分たちで用意して飾るのは自由にどうぞとのこと。また、火葬場の空きを3日くらい待つケースが多いとのことで、ドライアイス3日分で見積もってもらった(基本プランに2日分はあらかじめ含まれているので、1日分プラスという意味)。

なお、この段階ではあくまでも「見積もり」なので、申込金などは一切払っていない。

なぜわざわざそんなこと書くかというと、
「おじいちゃんは生前に自分の葬式を申し込んでて、お金も払ってあった」みたいな話をときどき見聞きすることがあるが、実際に葬式をやってみた実感としては、それってだいじょうぶなのかな、ぼったくられてないかなと思わなくないからだ。葬式代の相場ってものはだいたい決まってるけど、実際には何年後になるんだかわからないんだから、そのときの物価にも左右されるし、葬式代なんて「時価」って感じでは……?と思ったので、もし「お亡くなりになった後はしっかりとお引き受けしますから、あらかじめお支払いを」みたいな話にもっていく葬儀社があるとしたら、あんまりよろしくない会社なんじゃないかなあと、ちょっと思ったりするからだ。

あとそうだ、「お位牌はいらないとのことでしたが、遺影はどうされますか? 作りますか?」も聞かれた。実は、私はこの段階では、遺影はいらないんじゃないかと思っていた。理由は、母が「遺影なんて気持ち悪い」とかなんとか言って嫌がるだろうと思ったからだ(親戚宅に泊まったときに陰でそういうことを言っていたりするのは何度も見ているから)。となるとリビングや玄関などの共有スペースに置けないので、私の部屋に置く……?になりそうだが、私は私で、父を偲ぶのは遺影じゃなくて父の愛用品じゃないかなと思っていたりした(そして実際そうだった)。「でも、遺影ってしょせん、単なる写真ではあるしな……」とも思って、思わず「んー」とか「むー」とか考え込んでしまったところ葬儀社の方はまたなにか察したようで、「……まあ、今はまだお見積もりだけですから、入れておきましょうか。そのときになってみてご不要でしたらお作りにならないってことで、けっこうですから」と言って、見積もりに入れておいてくれた。

パンフレットと見積もりをもらって帰り、母や弟にも見せると、「ま、いいんじゃない?」とのこと。

遺影については、母は案の定、渋る様子だったが、私にはちょっと意外だったことに母がなにか言うより先に弟が「えっ、遺影は、いるでしょ! 遺影は宗教関係ないし!」と反応したため、母は「……あんたたちにまかせるわ」と言っていた。
(のちに遺影は、弟が率先して写真を選び、弟宅に飾られることになった。そして「いらないのでは……」と思った姉が小さめサイズで発注してしまっていたため、「もっと大きくてもよかったんじゃない?」と未だに言っている)

金額的にも妥当で、スタッフの対応もよく、無理にいろいろ押し売りしてきそうな感じもなかったし、建物内の雰囲気もよかった。他の葬儀社もチラシなどは見ていたので聞いておいてみようかとも思っていたが、ここは距離的にかなり近いこともあり、いざ“そのとき”になったら、ここにお願いするってことでいいだろう、ということに決まった。

葬儀社は24時間365日対応してくれる(ただし時間外は電話はいったん本社につながるが、最寄りに連絡を取って、折り返し連絡をくれる)。
いざ父が亡くなったら葬儀社に電話をすれば、担当者が車で可及的すみやかに病院へ向かってくれて、遺体を車に乗せて葬儀社へ運び、部屋に安置しておいてくれる、ということだ。
こういうの、「もしものときはいつでもお迎えに上がります」とかなんとか、ふわっと書かれてるものだが(それはやさしさってものだけど)、何をしてくれるのかいまいちわからんよねと思ったので、即物的に書いておく。

見積もりをもらうと、いちおうの目処は立ったなと、ちょっとホッとした。父にはまだ死んでほしくはないが。
帰り際に葬儀社の方が言ってくれた、「これでもう安心だと思っても、いざそのときになるといろいろとお気持ちが揺れたりすることはありますから、なんでもおっしゃってくださいね」という言葉も、ありがたく心に響いた。

さて、お墓はどうするか……の話は、次回。

8/14追記:
見積もりの金額を書いてなかったので、追記しておきます。
主な内訳は
・「火葬式」基本セットが16万5000円。
(棺・骨壺・霊柩車代なども含む)
・ドライアイス 1万1000円×3日分
・安置料 1万1000円×3日分
・遺影(手札サイズ)9900円
(サイズにより値段が違う。一番小さいサイズ……)
・お別れ花 2万2000円
・火葬料 6750円
(川崎市民が市営斎場を利用する場合の金額)
・休憩室 6000円
(火葬を待つ間の部屋代。廊下の椅子で待つなら無料)
※他、オプションで、火葬を待つ間の仕出し弁当、会葬者があった場合に備えての返礼品、などもあるが、見積もり段階では含めず。

以上で、見積もり段階での総額としては、約28万円
これを安いとみるか高いとみるかは人それぞれだと思うが、私はもっともっとかかるものだと思っていたので、「意外とかからないものだなあ」と、ちょっとホッとした感があった。

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