【コラム】2023年の建築着工統計をみる

2024年1月末に2023年(年次)の建築着工統計が発表されました。全国を対象とした2023年の倉庫の建築着工面積は1,248万㎡で、前年の1,329万㎡からマイナス6.1%の低下となりました。コロナ禍の2020年から2022年まで、首都圏を中心に倉庫の開発ラッシュでしたが、その結果として需給緩和に繋がり、建築コストも上昇していますので、全国ベースでは新規開発にブレーキがかかり始めたといえます。他方、都道府県別でみると、また違った傾向も見えてきます。2023年に倉庫開発が好調だった都道府県として、前年比で上位5つをピックアップすると以下の通りです。

佐賀県 24.5万㎡(前年比 317%増)
滋賀県 38.2万㎡(同上116%増)
兵庫県 116.7万㎡(同上99%増)
京都府 25.1万㎡(同上73%増)
東京都 67.9万㎡(同上52%増)

建築着工面積の伸びが最も高かったのは佐賀県でした。隣接する福岡県では2021年の建築着工面積が61万㎡で、2020年の25万㎡から2倍以上に急増し、その後も高止まりしていました。九州全体での堅調な倉庫需要が、交通の要衝である鳥栖エリア(佐賀県)での開発に繋がったと考えられます。
第2位から第4位までが関西エリアです。大阪府は一昨年の2022年の建築着工面積が125万㎡で、バブル期の1990年( 149万㎡)、1991年(129万㎡)に匹敵する水準となり、2023年には隣接する府県での開発ラッシュに繋がったと考えられます。特に、注目したいのは滋賀県で、地域経済に占める製造業の比率が高く、県内総生産における産業別構成比では第2次産業が49.6%も占め全国1位です。また、滋賀県は古くからの交通の要衝で、東海道、中山道、北国街道など複数の街道が乗り入れ、現在も主要幹線道路の結節点として機能し、鉄道網も同様です。2024年問題もありますので、引き続き注目です。
第5位が東京都で前年比では52%増です。首都圏では茨城県、埼玉県、神奈川県は前年比でマイナスと開発にブレーキがかかっていますが、都内は新規開発の動きが持続しており、同じ首都圏でも濃淡がはっきりと出ており、興味深いです。


本稿は株式会社一五不動産情報サービスが運営する、開発が相次ぐ賃貸物流施設に関する情報を集約したウェブサイト「一五蔵」のメールマガジンで投稿されたコラムです。
一五蔵
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