【コラム】ディベロッパーによる産業団地の開発

不動産ディベロッパーが物流施設の開発だけでなく、その前段階に当たる産業団地の開発に関与するケースが増えています。従来、物流施設の開発用地は、工場跡地を取得するケースが多かったですが、最近は大規模な工場閉鎖による用地売却があまりなく、数少ない案件をめぐり取得競争も激化しやすいです。その影響もありディベロッパーが産業団地の開発段階から関与するプロジェクトが増えてきました。トータルの開発期間は延びますが、土地価格を抑制できることがメリットで、物流施設の建築費も上昇していますので、この動きは拡大することが予想されます。

従来、産業団地の開発は、地域の雇用と税収に繋がる企業誘致を目的に、地方自治体が土地開発公社を活用して積極的に行っていました。2月26日に総務省から発表された「令和4年度土地開発公社事業実績調査結果概要」によれば、直近の2023年(4月1日時点)の土地開発公社数は日本全国に578公社ですが、ピークは四半世紀前の1999年で1,597公社もあり、現在の3倍近い水準です。また、公社による土地保有土地総額ですが2022年度は7,330億円ですが、ピークは1996年で9兆1,432億円となり、2022年比で12倍超と巨額でした。バブルの後始末になりますが、その後に債務超過に陥った土地開発公社は多く、会社清算したケースもひとつふたつではありません。その反省もあり、現在も地方自治体は新たな産業団地の造成に慎重です。また、従来の産業団地の造成は雇用創出という名目がありましたが、現在は深刻な人手不足の時代ですので、積極的に動きづらいという側面もあります。

産業団地の開発は、山林や雑種地からの転用もありますが、従前用途の多くは農地です。農地所有者の土地に対する意識も徐々に変わっており、行政が積極的に関与しなくても土地売却に応じるケースが増えているようです。今後も産業団地の開発では、物流施設ディベロッパーが深く関与するケースがさらに増加しそうです。


本稿は株式会社一五不動産情報サービスが運営する、開発が相次ぐ賃貸物流施設に関する情報を集約したウェブサイト「一五蔵」のメールマガジンで投稿されたコラムです。
一五蔵
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