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法とデザインの可能性 Part 2 ——「可視化法学 - 法に触れてみないか?」(芝尾幸一郎)

この記事は、昨年のイベントレポートの Part 2 として、芝尾幸一郎様のプロジェクト「可視化法学」について紹介していきたいと思います。

芝尾幸一郎様は株式会社ミラティブ(所在地:東京都目黒区目黒2-10-11 目黒山手プレイス 8F)でデータ分析のお仕事をされている傍ら、「可視化法学」は芝尾様個人のプロジェクトとして取り組まれているものです。
学生時代はメディアアートを専攻されており、過去には株式会社ドワンゴ(所在地:東京都中央区銀座4-12-15 歌舞伎座タワー)でニコニコ動画 for iPhone を開発したり、趣味でデータ分析やランキングサイトを作ったりしています。法分野に関するバックグラウンド自体はなく、サーバーサイドエンジニアとしてキャリアを歩んできました。過去には書籍『ゲーム開発が変わる!Google Cloud Platform 実践インフラ構築』(インプレスR&D、2016年)を執筆されています。

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今回は、個人プロジェクト「可視化法学」のご紹介からエンジニアが活用するソースコードと法令コードの類似性や法律自体の技術化まで、幅広く話題をご提供くださいました。

可視化法学とは

可視化法学」とは、法教育〔※平塚注:ここでは法律自体を学習する場を提供すること〕に役立てるため、ICTを活用して、法律の構造を解析して可視化するプロジェクトです。「可視化法学」では、法律の参照構造を把握して、その繋がりを可視化しています。

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その表現方法としては、総務省の法令データベースから法令情報をダウンロードし、以下の手順で行います。

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可視化法学の描画の特徴として、多くの法律から参照されるされる法律の(点と文字列の)サイズは大きく、点の色はその法律がどの分野に属するかを表現しています。様々な分野から参照される法律は色鮮やかになります。

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芝尾幸一郎様が「可視化法学」を行っている動機は、「法律は難しすぎる」という問題意識からです。法律という文章がありそれをただ読みましょうでは読めないと感じ、それなら可視化しようと思い立って、このプロジェクトを始めたそうです。

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code (法令) も code (ソースコード) も code である

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芝尾幸一郎様の「可視化法学」は、「法令工学」とは異なり可視化に着眼点を置いています。ご自身も複雑な構造の可視化に興味があるとお話されていました。
また、法令等をソースコードのように捉えた取組みとして、株式会社ドワンゴ 代表取締役会長兼CTOの川上量生氏(当時)の Developers Summit 2015 基調講演や、大野睦昌氏によるメディアアート「論理憲法」(第20回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品)についてご紹介いただきました。川上量生氏の取組みを簡単に説明すると、著作権法を JavaScript と同じように構造化して循環的複雑度を計算すると複雑度の合計が 103 になったという内容です。通常 70 以上でメンテナンス不可能といわれているそうです。

また、エンジニアはソースコードを書くだけではなく、自分たちが書いたプログラムを効率よく動かしたり、プログラムのどこが間違っているか理解しやすくしたりするツールもたくさんつくっています。その中で、「プロファイラー」という、どのプログラムコードがどのくらい呼び出されているか、どのようなコールグラフで呼ばれているのかを可視化していくものがあります。芝尾様は法律も同じようにできたらいいなと思い、法律の参照を調べてみようと思ったのだそうです。

法律をGitHubで管理

ドイツのソフトウェアエンジニアである Stefan Wehrmeyer 氏の GitHub にドイツの法律を公開した取組みをご紹介いただきました。

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GitHub に公開したドイツ連邦共和国基本法〔※平塚注:ドイツにおいては東西ドイツに分裂した歴史的経緯から統一ドイツの実現まで憲法の制定が留保されたことにより、形式的意義における憲法はなく、西ドイツ由来の基本法が実質的意義における憲法として冷戦終結後の現在まで機能している。〕

Stefan Wehrmeyer 氏が公開したGitHub に公開したドイツの法律
https://github.com/bundestag/gesetze

他にも、リコーの「ディープアライメント」や書籍から「法のデザイン」、「アーキテクチャと法」、スタンフォード 大学の「CODEX」の取組みをご紹介いただきました。

以上が芝尾幸一郎様に発表していただいた内容になります。

「可視化法学」の説明は、以下の資料からも詳しく知ることができます。
https://www.slideshare.net/shibacow/found-it-project9

「可視化法学」の歩み
https://visualized-laws.hatenablog.com/

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