沖縄のアンツクを求めて(石垣島編)
沖縄県に「アンツク」なる似たような民芸品がある。
そう聞いたのは、岩芝民芸を始めて3年目になった頃である。
検索してみると、ほほう🧐
かなり空間が空いていて、ざっくりとした作りだけれど、めちゃくちゃ似ている。材料は『月桃』という、沖縄ではそこら辺にいっぱい生えている植物。材料確保しやすく、簡単に作れそうだし、形が今風で超可愛い。
こんな民芸品、沖縄にあったの!?
15年も沖縄住まいだったのに、聞いたことも見たこともなかった。
驚きとともに、これは調べに行かねば!と思い立ち、有給消化兼ねて頑張って行ってきました。岩芝民芸とはまったくの別物ではありますが、民具・民芸品づくりということで参考となると思いますのでレポしますね。
月桃(げっとう)とは
沖縄の生活には欠かせない植物で、庭や畑の片隅には必ず繁茂している月桃。雑草ではないものの、沖縄では超ポピュラーな植物です。
なぜなら1月初旬から2月上旬ぐらいまで、月桃の葉で巻いて蒸した餅「ムーチー」が各家庭で作られるから。独特の香りが付いた甘い餅は、沖縄人全員大好き(だと思う)。
ちなみにムーチーは沖縄人でないと食べる機会がありませんが、月桃の香りをつけた饅頭ならば、首里あたりでいっぱい作られています。
例えば”山城まんじゅう”。
女性の方だと、月桃化粧水などがこちらでも流通しているので、知っている方も多いと思いますが、wikiリンクおいておきますね。
そもそも私が月桃細工に興味を持ったのは「ショウガ科」だから。
以前より、岩芝の代替繊維として「ミョウガ」を考えてトライしているのですが、なかなかうまく行かず…繊維を長く採れないし、繊維もカビるし…
なにか突破口はないかという期待を込めて、いざ!沖縄石垣島へ✈
やちむん館工房 紗夢紗蘿(さむさら)さんでワークショップ
この「アンツク」なる民芸品を検索すると、真っ先にヒットする工房さん。今回はこちらで、月桃コースター作りを体験することに。
月桃コースター作り・2時間コースは、私ひとり。先生独り占め、贅沢…
今回の目的はコースターを作ることではなく、月桃繊維を知りたい!触りたい!だったので、2時間という短い間でしたが、繊維の感触、使い方が知れて、とても楽しい時間を過ごすことが出来ました。
植物編んでいなくても、ここのワークショップは超オススメ。マジで楽しい。
月桃繊維の特徴(個人的印象)
薄いようで厚みがあったり。弱いようでとても強いけれど、折れるところは折れる…という、指に馴染むまで結構時間がかかりましたが、それを除けばとても扱いやすい繊維だなと思いました。
湿気の高い沖縄で、植物が乾燥しているというのにも驚きなのですが(梅雨時期に畳からキノコ生えるレベルの湿気)、そもそも月桃自体に抗菌・防虫作用があるので、カビも発生しにくいのだそう。
ぬぬぬ・・・
我が家のミョウガは、完全に乾燥させたのにカビたぞ・・・なぜだ…
先生は「今日ぐらいの湿気だと柔らかくて扱いやすい」と、湿気ウェルカムな発言をしていました。沖縄の風土に合った繊維なんだなぁとシミジミ。
月桃繊維の採り方(ざっくり)
月桃繊維が採れるのは、大体11月から4月まで。花芽がつく前までだそうです。繊維は青い葉っぱではなく、茎にくっついている部分。1週間ほど乾燥させてペリッとテープ状に剥ぎ取り、くるっと丸めて乾燥させます。(擬音が多い!)
こちらを好きな幅に切って、コースターや鍋敷き、細く割いて紐にしてアンツクなどにしていきます。割と簡単に材料確保はできるのですが、10cmほどのコースターで月桃2本ぐらい使うそうなので、大きい作品になると300本以上は必要に…
植物を扱うということは、どんな材料であっても利用するのは本当に大変。
とりあえず今年はミョウガ繊維もこの方式をパク…真似して採ってみよう!
アンツクについて
本来のアンツクは、海や山に行く時に使う道具で、腰にぶら下げるスタイルだったそうですが、今では使いやすく持ち手がついたり、ショルダーがけになっています。またすべて撚った紐で編まれていて、秩父地方のスカリと同じ編み方かな~と今、じっくり脳内で編みほどいているところです。
民具の編み方って基本的に同じなんだよな…
あと月桃の紐は意外としっかり硬いので、形が保持できるのも驚き。
他にもアダンの気根などでも編まれるそうで、詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ ↓
5年ほどで新しいものに替えるというのは驚きでした。気候的にも繊維が保たないのかもしれないですね。
このアンツク。こちらの工房だけでなく、空港などでも数点販売されています。見かけたらぜひ、お手に取ってみてください。
八重山諸島には、なぜ古くからの民具が残っているのか
八重山諸島ではこの他にも、数々の民具が残っています。
例えば「アダン葉草履」
https://yachimunkan.co.jp/shop/item.cgi?Id=4
西表島の節祭(シチ)では必須のアイテムなのだそう。
ただ島の人も作るのが面倒なので、こぞって買いに来ていたそうです。
このように昔からの祭りごとで植物を利用し民具を作るという習慣が残っていること、使う人達がいるので次の世代に繋がっていくこと。
そしてそれら民具の作り方の本も出版されていること。
だから今なお職人さん達がたくさんいて、若い世代に継っているんだなぁ…
NPO 西表島エコツーリズム協会 さんホームページから購入出来ます。
本土の植生とは異なるので、あまり勉強にはならないかもですが、茅などはこっちにもあるので、使い方次第ではいろいろ応用できそうです。
すべてゼロベースの岩芝民芸にとって、石垣島の若い職人さんは眩しかったよ。岩芝民芸も、せめて資料レベルで誰かまとめていて欲しかったよなぁ…(´Д`)ハァ…
月桃繊維を購入して実際に紐にしてみた
小さいアンツク(スマホ入れぐらい)を作りたかったので、月桃繊維を購入して紐にしてみました。
時々硬いところがあるものの、2時間ほど作業で、10mほど撚れたので、撚りやすい繊維だなーと思いました。
ただ購入したアンツクよりも薄茶色だなーと思っていたら、”裏の余計な部分を削いだアンツク用の繊維”があって、それを使うと白い紐になるのだそう。
なるほど。こういった手間が民具と工芸の違いになるのか。
購入したアンツクを見ながら、少しづつ編んでみようと思っています。
が・・・
気温20℃以上の沖縄から、朝晩氷点下の湯西川に戻ってきたため、絶賛体調不良に陥っていて、やっとこさ、この記事もまとめきったところです。
というわけで、石垣島でした。
次、宮古島編、まとめます!
あ。一番の思い出は、野底マーペーからの景色です。
石垣はもう行くことはないとは思っているけれど、行けたら今度は於茂登岳に登りたい。
- ichico -
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