スタート地点と新しい挑戦
2017年5月、思い起こせばモロッコのララチェ(ララシュ)という小さな漁村で飲んだ一杯のミントティから始まったのかもしれない。
本鮪の買い付け、検品で毎年訪れていたその村。到着の翌日の出来事。3月に盲腸を患い、薬で飛ばしたのだが、記憶に新しいあの痛みが再び腹部を襲う。少々のことなら我慢するのだが、この時ばかりは確信があった。結果はやはり盲腸の再発で手術一択であった。この国の医療を信頼できなかった私は吸引式の麻酔を思いきり吸い込んだ。3秒で昇天し気づけば病室のベッドの上にいた。手術は成功したがその後の切り口の痛みが想像以上で、1週間程滞在してから帰国することにした。
普段日本では忙しく、無心に突っ走ってきた私は滞在中ホテルの前のカフェでミントティを飲みながらある思いにふけた。
「新卒で就職して12年、セリ人として築地市場で散々美味しい魚を食べてきたけど、一般の消費者の口には届いていない。安くて美味しいものが沢山あるのに・・そうだ!自分で魚屋をやって美味しい魚を食べてもらおう」
そう決意した私は帰国後、時間を見つけては水産業界の問題点を考え、どうすれば美味しい魚を消費者に食べてもらえるかを考えた。
水産業界の問題点
売り場サイド
・顧客満足度を考えない仕入
・仕入れた品物の多くを廃棄しており、それを前提とした仕入れ値と売値
流通全体
・生産者や中間業者(卸、問屋、加工業者など)の数が末端業者(スーパーマーケットや寿司店などの飲食店)の数に対して多すぎるという構造的な問題のせいで、利益を圧迫している
・刺身至上主義が蔓延しており食べ方のバリエーションが少ない
・生産者の志が消費者に伝わっていない
・マーケティング不足で均一なサービスしか提供されていない
働き手サイド
・出口のない閉塞感のにより、業界の未来に希望が持てない
などなど、今後もっと詳しく説明していきたいと思うが、これらの問題を解決しなければ水産業界は持続できず非常に暗い未来が目の前まで来ている。
以上のことから一大決心を致し、2021年4月16日より
”日本の魚食文化を未来に繋ぐ魚屋”
としての活動をしていくことに決めたのである。
今後は市場の話や鮪業界の話、海外出張での体験談、美味しい魚、鮪の楽しみ方などを中心に展開していきたいと思います。
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