FSB第5局の漏洩文書をもとにしたInsikt Groupのロシア影響工作分析レポート
Insikt Groupというか、Recorded Futureが2022年7月7日に公開した『Russian Information Operations Aim to Divide the Western Coalition on Ukraine』(https://www.recordedfuture.com/russian-information-operations-divide-western-coalition-ukraine)を読んだ。
このレポートはロシア連邦保安局第5局( Fifth Service of Russia’s Federal Security Service=FSB)の通信をウク ライナ治安局(SBU)が傍受して入手したメモをもとにしている。正確にはInsikt Groupの分析とメモの内容が一致していたので、当たっていた! という話である。巻末にメモそのものの英訳もついている。
●レポートの内容
ロシアのデジタル影響工作は主として西側連合を分裂させるため、主としてフランス、ドイツ、ポーラ ンド、トルコをターゲットにしていたという。
利用された主要なナラティブは下記の通り。
・欧米首脳への不満を募らせる
・ウクライナ難民の否定的描写
・経済、エネルギー、食糧への不安を煽る
・ウクライナはナチズムの源流
・欧米メディアへの不信感
レポートはこれらの具体例をあげて紹介している。
●漏洩メモの内容
メモは非常に具体的に書かれており、作戦指示書という感じだ。むしろこっちの方が役に立つ。
ターゲットをロシア国内、旧ソ連邦、EUのように分け、それぞれへのメッセージを分けている。たとえば、「職業柄、多くの人と接することが多い人に依頼す ること。特に、教師、タクシー運転手、サロンスタッフ など」と細かく書いてある。
●感想
Recorded Futureというので期待したのだけど、事例紹介に留まっていたのは残念だ。影響の範囲や効果など数値でも検証がほしかった。
マイクロソフトの報告書もそうだったが、なぜグローバルノースのカルトな人や、グローバルサウスは分析対象にしないのだろう?
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