民主主義の現在 How to Save Democracy From Technology

歴史の終わりで有名なフランシス・フクヤマ教授らの論考でForeign Affairsに掲載された。Foreign Affairsは日本のメディアで紹介されることが少ないが、それにしてもこれを紹介しないのはもったいない。ちなみに日本語版のフォーリン・アフェアーズ・リポート 2021年2月号には載っている。

タイトルからすでにそうなっているわけだが、フェイスブック、グーグル、ツイッターなどのSNS企業が民主主義の脅威になっていることを指摘し、そのために取り得る対策を検討している。
SNS企業の強みの源泉はデータとし、ひとたびデータ優位に立てばさらにデータが集まるというフィードバックループが形成され、集めた資金で競合相手を買収してゆく。
SNS企業に責任ある対応を求める声が多いが、それは長期的な解決にはならないとしている。これほど力を持った企業は装填済みの兵器と同じで為政者に悪用される可能性は常にある。

もっとも一般的に言われている解決策は規制強化である。ドイツのフェイクニュース規制法などが代表で、プロパガンダやフェイクニュースを違法とする。これは必ずしもうまくいかないことが多い。たとえばアメリカでは機能しない。
次の方法は現在のような独占状態から競争ある環境に移行させることである。かつてStandard OilやAT&Tをそうしたようにやフェイスブックやグーグルを解体すれば独占から競争状態に移行できる。しかしAT&Tですら再び強力な市場影響力を持っている。フェイスブックやグーグルならもっと早く再び市場を独占できる可能性が高い。
データの権利を利用者個人のもとして、データポータビリティを保証するように法律で強制する方法もある。GDPRはそのひとつだ。個人が自分のデータを自由にSNS企業から引き上げ、他のサービスにデータポータビリティを利用して移行できれば既存企業の優位性あゆらぐ。しかし、すでにSNS企業が保有している莫大な種類のデータのポータビリティを実現するのは現実問題として難しい。
プライバシーに関する法律でSNS企業の活動に制約を加えることも可能だが、同時に新規参入の参入障壁にもなるため、独占状態を緩和できない可能性が高い。

フランシス・フクヤマ教授が解決策として提示しているのは、ミドルウェアである。法律によってフェイスブックやグーグルに彼らのデータにアクセスできるAPIの提供を義務づける。ミドルウェアは、そのAPIを通して利用者に独自の表示順序、ラベリングなどの編集を行ったうえでコンテンツを提供する。こうすると、同じフェイスブックのサービスを利用していても異なるミドルウェアを使用している利用者には異なる内容が表示される。またフェイスブックのアルゴリズムによらない表示やサービスが提供されることになる。SNS企業は莫大な利用者の個人情報の独占的利用ができなくなるうえ、利用者との直接の接点を失い独占的な優位性がゆらぐというわけだ。

ミドルウェアの実装にはかなり課題が多いと思われるが、SNS企業と利用者の間に緩衝とある異なるサービスをかませるのは今までにない発想で、実現すれば全く新しい市場と可能性が拓ける。もちろん悪用、善用双方が可能だろう。たとえばトランプはトランプ信者のための専用ミドルウェアを作って配布することもできるだろう。

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