ロシアの期待通りに反ウクライナのデマに広告を配信し続けているグーグルは情報公害企業
グーグルは2022年2月26日にロシア国営メディアへの広告配信を中止したが、反ウクライナ、反民主主義のデマを拡散するサイトへの広告配信は継続している。GLOBAL DISINFORMATION INDEX(GDI)社が3月24日に公開したレポート「Ad Funded Disinformation on Conflict in Ukraine: Ad tech companies, Brands and Policy」(https://wp.ian.globdis.info/wp-content/uploads/2022/03/GDI_Ad-funded-Disinformation-on-Russia-Ukraine-Conflict_24-March-2022.pdf)をご紹介する。
【2022年5月18日追記】新しいGDIのレポート
●声明に反して広告配信を続けるグーグル
このレポートの元となった調査は、2022年3月2日から10日にかけて行われており、グーグルがロシア国営メディアへの広告配信を停止した後のことだ。グーグルは配信停止の際、「We will continue to actively monitor the situation and make adjustments as necessary.」と書いているが、実際にはなにもしていなかったか、見ない振りをしていたことになる。
中には、アインシュタインによって設立された国際的な人権団体である国際救済委員会(International Rescue Committee)の広告を、ウクライナの民族主義者がマリウポリからの市民の脱出を妨害したというデマの記事に配信していた事例もあった。
問題となったサイトが拡散していたのは、下記のような内容だった。
・ウクライナはナチ、ファシスト
・ ロシアは、ウクライナの「脱ナチ化」のために、戦争ではなく特別軍事「平和維持」作戦を開始した
・ ウクライナはドンバスで大虐殺を犯している
・ウクライナは民間人を殺したり、人間の盾として使ったりして、それをロシアのせいにしている
・ウクライナは共産主義の捏造であり、主権国家の権利を与えるべきではない・NATO加盟国の行動は無効である
広告を配信していたのは、グーグル、Yandex、CRITEO、revcontentで、このうちグーグルだけがウクライナ危機に関して声明を発表し、対応するとしていた。
しかし、いまだに広告配信は続いており、これらのサイトに収益をもたらしている。GDI社の他のレポートによると、月間100万ドル以上(1億円以上)の収益をもらたしていた。
【追記】GDIは2022年4月27日、4月8日と継続してレポートを公開しており、そのすべてでグーグルはウクライナに関連したデマのサイトに広告配信を続けていることが確認されている。デマの内容は大きくは変わっていないが、ブチャでの虐殺の否定やバイオラボ陰謀論などが加わった。
●グーグルはロシアのプレイブックが期待した通りのことをしている
他の記事(https://note.com/ichi_twnovel/n/nce3b3fc468a7)で書いたように、反ワクチンを主張していた陰謀論や差別サイトが、ウクライナ危機をテーマにいてロシア擁護を始めている。内容やフォロワーの親和性もあるが、その時点でもっとも注目を浴びているテーマを取り上げてアクセス=広告収入を上げることも理由にあるだろう。
ロシアはプレイブックにしたがって、陰謀論や差別サイトを煽っており、グーグルはその期待に添うように彼らに資金を提供し続けていることになる。
関連記事
コロナ禍によって拡大した、デマ・陰謀論コンテンツ市場
https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2021/06/post-25.php
グーグルが広告料金で支援する陰謀論や差別主義者サイトとアメリカのメディアエコシステム
https://note.com/ichi_twnovel/n/n197db671b2a6
関連書籍
フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 (角川新書)
『新聞記者』(角川新書、2017年10月12日)
『報道事変 なぜこの国では自由に質問できなくなったか』(朝日新書、南彰、2019年6月13日)
『権力と新聞の大問題 』(集英社新書、望月衣塑子、マーティン・ファクラー、2018年11月6日)
本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。