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アメリカ・インテリジェンス・コミュニティ2024脅威レポートを読んだ

「ANNUAL THREAT ASSESSMENT OF THE U.S. INTELLIGENCE COMMUNITY」(2024年3月11日、 https://www.dni.gov/index.php/newsroom/press-releases/press-releases-2024/3789-odni-releases-2024-annual-threat-assessment-of-the-u-s-intelligence-community )を読んだ。

●概要

内容は大きくアメリカおよび西側の脅威になっている国家アクターと国境を越えた問題のふたつに分かれている。

・国家アクター

 中国、ロシア、イラン、北朝鮮および「紛争と脆弱性」(ガザ、潜在的な国家間のもの、潜在的な国内ののの)

・国境を超えた問題

 破壊技術、デジタル権威主義、大量破壊兵器、環境変化と異常気象、健康安全保障、移民、非国家アクター(国際犯罪組織、人身売買、グローバルテロリズム、民間軍事・警備会社)、

網羅的に取り上げているので、現在の国際情勢を知るための参考になる。特に参考になるのは一般メディアなどが取り上げている話題の範囲の違いや、取り上げ方の温度差だ。たとえば、一般メディアでは紛争や権威主義を取り上げる時に、環境問題を取り上げることはない。しかし、実際には環境問題は移民問題の原因のひとつで、これらは各国に不平等な悪影響を与え、社会を不安定にする。紛争や権威主義の台頭につながる重要な要因なので、これらをどうにかしないと、紛争と権威主義は増加する一方になる。しかし、ほとんどのメディアの議論からはすっぽり抜け落ちている。

本レポートには、経済的な不平等が世界の安定を悪化させており、各地で債務負担、ウクライナ戦争にともなう経済悪化、異常気象がもたらすコスト増や生産ロスに触れ、インフレの高止まりや食糧安全保障に影響を与えていると指摘している。特に世界人口の多数を占める低・中所得国が異常気象、食糧 ・水不足、人道災害のリスクにさらされている。つまり、これらの国々を放置すれば社会は不安定になり、権威主義に向かうと示唆している。この問題認識を前提として、個々の問題に対処しなければ問題の解決に結びつかない。

国家アクターの分析に影響工作(Malign Influence Operations)が含まれており、デジタル影響工作にも言及されているのも助かる。

また、個々の問題についてすっぱり言い切っているのは、賛同できるかどうかは別としてわかりやすい。たとえば下記の断言は特に印象に残った。

中国
・最大の懸念は中国と台湾の統一
・中国の経済成長は確実に鈍化する
・中国には最近の戦争経験がなく、実際の戦闘を行いたくない
・中国はアメリカを分断を利用しようとしており、ロシアのプレイブックに似てきている
・中国がアメリカの選挙に干渉するのは分断を広げるためである(特定の政党や候補者を当選あるいは落選させる意図はない)
・国内と国外の安全保障上の脅威を混同していることが対処能力を下げている。

ロシア
・ロシアはアメリカおよびNATOとの軍事衝突を望んでいない
・ロシアと中国の経済的な結びつきは強化されている
・ロシアのエネルギー面での影響力は保持される
・ウクライナでの行き詰まりは、ロシアの戦略的な軍事的優位を生み、ロシアによって有利になっている
・地上軍の大幅な強化は失敗するが、より大規模な軍にはなる(質の向上はない)。
・ロシアの影響工作はアメリカおよび関係国の分断を引き起こそうとしている
・2024年のアメリカ選挙はウクライナ支援に影響を及ぼす可能性が高いため、ロシアは干渉を行う


もちろん、これはあくまでも私の感想なので、気になることがある方は、そこだけでも拾い読みすることをお勧めする。

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『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)
『フェイクニュース 戦略的戦争兵器』(角川新書)
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