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ツイッター社が3月29日にロシア、中国、イランのプロパガンダメディア規制を緩和し、フォロワーとエンゲージメントが急増

いつの間にかツイッターでロシアや中国やイランのプロパガンダアカウントに対する通称シャドウバン(ツイッター用語だとvisibility filtering rules=可視化フィルタリングルール)が外され、そのためこれらのアカウントが発信する情報のエンゲージメントが拡大し、フォロワーが増加したことをNPR(米国公共ラジオ放送)が「Twitter once muzzled Russian and Chinese state propaganda. That's over now」(2023年4月21日、https://www.npr.org/2023/04/21/1171193551/twitter-once-muzzled-russian-and-chinese-state-propaganda-thats-over-now)報じている。
この調査にはDFRLabが協力しており、そちらのレポートは「State-controlled media experience sudden Twitter gains after unannounced platform policy change」(2023年4月21日、https://dfrlab.org/2023/04/21/state-controlled-media-experience-sudden-twitter-gains-after-unannounced-platform-policy-change/)である。

2020年8月7日から2023年4月6日まで、ツイッター社のポリシーには政府系メディアにラベルをつけ、それらを推奨したり、増幅したりしないという文言があった。この文言は4月6日の夜にこの文言は削除されていた。この変更はツイッター社が政府系メディアの制限を撤廃したことがVOAなどで記事になった後に行われていた。

ツイッター社が政府系メディアにラベルをつけたことで、NPRやPBSはツイッターを止めた。その一方でロシアのRT系プロパガンダメディアアカウント9、中国のCGTN系プロパガンダメディアアカウントが少なくとも28、イランのPressTV系プロパガンダメディアアカウントは少なくとも5、少なくとも合計42のアカウントから政府系のラベルが外され、シャドウバンもなくなった。

ただし、シャドウバンはこれに先立つ3月29日に外されていたことがこれらのアカウントのフォロワーの増加やエンゲージメントの急増から推定できる。

RTフォロワー数の増加 「State-controlled media experience sudden Twitter gains after unannounced platform policy change」(2023年4月21日、https://dfrlab.org/2023/04/21/state-controlled-media-experience-sudden-twitter-gains-after-unannounced-platform-policy-change/)より
RTのエンゲージメントの増加 「State-controlled media experience sudden Twitter gains after unannounced platform policy change」(2023年4月21日、https://dfrlab.org/2023/04/21/state-controlled-media-experience-sudden-twitter-gains-after-unannounced-platform-policy-change/)より

ツイッター社はさまざまな研究者や人権団体に相談したうえで、2020年に政府系メディアアカウントのシャドウバンを開始し、政府系メディアのラベルのついたアカウントは、推奨や増幅されなくなった。
たとえば、RTをフォローしていない人が検索バーにRTと入力しても、そのアカウントは表示されなくなる。フィルタリングによってロシアのRTのツイートのリーチは30%減少したことが確認されている。

イーロン・マスクは「All news is to some degree propaganda, Let people decide for themselves」(すべてのニュースは多少はプロパガンダだ。読んだ人々自身に判断させる)と語っている。

調査分析を担当したAlyssa Kannは「This whole episode shows what happens when we cede public debate to tech companies」(このエピソードは、公的な議論をテック企業に委ねるとどうなるかを示している)と語った。

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