最強の米中関係史解説書 『米中対立-アメリカの戦略転換と分断される世界』拝読
『米中対立-アメリカの戦略転換と分断される世界』(佐橋亮、中央新書、2021年7月21日)をやっと読めた。発売と同時に読みたかったものの、電子書籍がなかったのでなかなか入手できなかった。昨日、ふと見たら電子書籍があったのでさっそく購入して、一気読みした。
●本書の内容
本書は国交正常化から現在にいたるまで(おそらくバイデン就任数カ月後くらいまで)の米中関係を解説し、最後に米中以外の各国の状況と、今後について書かれている。
非常にていねいに史実と資料を追って書かれており、わかりやすく読みやすかった。
・米中関係の流れ
まず、この期間の米中関係を大きく3つに分けている。
1.冷戦下での対立。
2.接近。楽観的な見通しのもとに関与と支援を行った。
3.米中対立。現在であり、関係を模索中。
冷戦下で対立状態にあったものの、米中双方がソ連という脅威を前に手を結び、国交正常化を実現する。
その後、アメリカは中国に3つの期待(中国が政治改革し、市場化し、国際社会に協調する)を抱くようになり、実現させるために関与と支援を行った。
その結果、中国は急速に成長したが、アメリカの3つの期待は実現しなかった。今後も実現する見込みがないことと、アメリカに追いつくほどの成長を遂げたことを脅威に感じるようになる。
世界のパワーバランスが変わることを防ぐために、アメリカは中国を抑制するようになり、新しい冷戦と呼ばれる米中対立となった。
・本書のポイント
本書では先述の流れを政治、外交、社会、研究者などの動きからくわしく解説してくれている。当時の状況や、関わったキイパーソン、重要な判断の根拠などがわかるようになっている。
アメリカ国内の政治家や研究者の動きが手に取るようにわかって興味深く、参考になった。
特にトランプ以降については最近のことでもあり、トランプ政権内部での動きや、その影響がわかって個人的にはとても役に立った。
また、アメリカ国内の研究機関や宗教組織など関係している機関を具体的にあげて、果たした役割が書かれていたのも参考になった。
当事国以外の多くの国はどちらか片方だけに肩入れしにくい状況だということも各国の事情が紹介されていてよかった。
最後に出典の一覧があるのだが、特に読んでほしい本に「*」マークがついていて、これまた助かる。
●感想
私は国際政治は完全に素人なので、米中関係の基本的な知識を得るのにとても役に立った。事実をおさえつつも、著者の観点からの整理と分析もあって理解が深まる。さらに、章ごとに年表がついているのも、どういう時期の話が書かれているか先にわかるのでとてもよかった。
すごくおしいのは、ロシアのウクライナ侵攻の前に書かれたことだ。ウクライナ侵攻が米中関係に与える影響についての著者の見解も読みたかった。
また、中東、アフリカ、ラテンアメリカ諸国が米中関係の変化に対して、どのような反応を示すのかも気になった。本書の範疇を超えてしまうけど。
最強の米中関係史の解説書だと思う。
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