見出し画像

中間選挙が終わるとアメリカのウクライナ支援は後退する

中間選挙の結果によって、アメリカのウクライナ支援が後退する可能性は、すでに7月1日に刊行した拙著『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)にも書いた。当時、日本ではアメリカの中間選挙とウクライナ支援を結びつける報道は限られていた。中間選挙が目前にせまって、報道が一気に増えた。

●中間選挙が終わると、ウクライナ支援が後退する理由

理由は非常に単純でアメリカの2大政党のひとつ共和党はウクライナ支援には批判的(もちろん賛成している党員も少なくなく、超党派で結びついている)であり、下院は共和党が勝利することがほぼ確実とみられているためだ。
また、共和党がウクライナに関して必ずしもまとまっていないように民主党もまとまっていない。下院の民主党議員30名が大統領にウクライナ政策の見直しを迫る書簡を提出している。書簡はその後撤回されたが、民主党の中にも異論があることは確かだ。ただし、この書簡は7月に作られたもので、この時期になぜ出て来たのかは不明だ。
Liberals urge Biden to rethink Ukraine strategy(Washington Post、2022年10月24日、https://www.washingtonpost.com/politics/2022/10/24/biden-ukraine-liberals/
HOUSE PROGRESSIVES FLOAT DIPLOMATIC PATH TOWARD ENDING WAR IN UKRAINE, GET ANNIHILATED, QUICKLY “CLARIFY”(Intercept_、2022年10月24日、https://theintercept.com/2022/10/25/house-progressives-letter-russia-ukraine-diplomacy/)

最近公開されたロイターの分析「Analysis-U.S. Republicans aim at Ukraine aid but unlikely to block it」(2022年10月21日、https://www.reuters.com/article/ukraine-crisis-usa-republicans-analysis-idAFKBN2RG0LH)では支援を完全にやめることはないが、縮小や遅延の可能性は高いとしている。

●中間選挙後のインパクトが予想以上である可能性にも備えなければならない

中間選挙およびそれにともなう変化として次のことが考えられる。

・共和党が上院で勝利する=ウクライナ支援は大きく後退
・国際世論の変化。アメリカの大手メディアの中にはウクライナ支援に関して、後退した記述を行うものが出てくる可能性がある
・中間選挙にともなって、なんらかの事件が起きる(2021年1月6日の連邦議事堂での暴動のような騒動)
・台湾有事への対応の後退


以前にも書いたようにアメリカの共和党はもはやカルトの梁山泊となっており、その影響力が増大することはアメリカそのもののカルト化につながる。

関連記事
グローバルノースの多頭の獣 #非国家アクターメモ のまとめ
番外編 反主流派の梁山泊となった共和党の新しい仲間”Moms for Liberty”  #非国家アクター メモ 9

好評発売中!
『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)
『フェイクニュース 戦略的戦争兵器』(角川新書)

本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。