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Metaの2023年第2四半期脅威レポート 中国オペレーションの大規模テイクダウン

毎回、見逃せないMetaの脅威レポート(https://about.fb.com/news/2023/08/raising-online-defenses/)の最新版。
巻末にはベン・ニモ発案のキルチェーン(https://note.com/ichi_twnovel/n/nbca2b5966d60)に基づく詳細なデジタル影響工作活動の整理がある。
今回はトゥルキエ、中国、ロシアに関するものが中心だった。


●トゥルキエ(旧名トルコ)

3つのテイクダウンが報告されている。2つはトゥルキエの選挙を前にして活発になったもの、ひとつは広告報酬目当てだった。
選挙に関連したものは下記。
・22のFacebookアカウント、21のページ、7つの Instagramアカウントをテイクダウン
・60のFacebookアカウント、37のページ、2つのグループ、20の Instagramアカウントをテイクダウン。VOMM Creative、Skala Medya、TMSC Media、 Bin945 Creative WorksといったSNSエージェンシーを利用していた。
広告報酬目当ては、34のFacebookアカウント、49のページ、107のグループ、12の Instagramアカウントで構成されており、独立系ニュースメディアを装った12個のオフプラ ットフォーム・ウェブサイトを運営していた。ニュースメディア、Turkuaz Gazetesiが関与していた。

●中国

過去最大規模のSpamouflageのテイクダウンを実施した。Facebookアカウント7,704件、ページ954件、グループ15件、Instagramアカウント15 件をテイクダウン。
約560,000のフォロワーがこれらのページの1つ以上をフォローし、10未満の
アカウントがこれらのグループの1つ以上に参加し、約870のアカウントがこれらのInstagramアカウントの1つ以上をフォローしていた。
主にフォロワーはベトナム、バングラデシュ、ブラジルののスパ ム事業者から購入された能性が高いとレポートは推定しいる。
台湾、米国、オーストラリア、英国、日本、そして世界の中国語圏の人々を含む世界中の多くの地域をターゲットにしていた。日本については巡航ミサイル開発中とデマだった。

X、YouTube、TikTok、 Reddit、Pinterest、Medium、Blogspot、LiveJournal、VKontakte、Vimeo、および数十の小規模 なプラットフォームやフォーラム、FacebookやInstagramを含む50以上のプラットフォームや フォーラムで活動していた大規模かつ多量の秘密影響力活動を発見した。
以下は活動の特徴。

・集中制御、分散オペレータ

活動は中国各地に分散していたが、そのコントロールは一元化されていた。

・小規模プラットフォームを拠点とする

利用されたプラットフォームは多くの地域、多種のプラットフォームに分散し、リンクしていた。
小規模なプラットフォームに投降し、そこへのリンクなどを大規模プラットフォームに投降するといった活動も広がっている(筆者注:これは以前から指摘されていたことだが、今回あらためて確認された)。

・ロシアの手法(Secondary Infektion)の模倣

中国がロシアの手法を学んでいることは以前から指摘されていたが、今回はSecondary Infektionの模倣が確認された。

・大規模展開と少ない成果

こちらも以前から言われてきたことだが、大規模な作戦を展開しても効果があまりない。ただし、レポートは中国の手法は確実に進化しており、注意が必要と警告している。(筆者注:2023年第一四半期のMetaレポートでは、中国による福島の放射能に関するフェイクが取り上げられており、現在の汚染水放出にともなう一連の中国の行動につながっていることがわかる)

●ロシア

ロシアの2つの企業、Structura National TechnologyとSocial Design Agencyが実施した、Doppelganger(ドッペルゲンガー)について報告されていた。
Doppelgangerとは報道機関や政府機関のフェイクのサイトを似たようなドメインで作り、フェイクを発信することであり、テイクダウンされても繰り返し行う。
ターゲットは、ドイツ、フランス、ウクライナ、アメリカ、イスラエルに対してウクライナへの支持を低下させるような意志をくじくようなニュースを配信する。
特徴は下記、
・持続性 2017年以降、継続的に行われている。
・高コスト、低効果 手間とコストのわりには効果はあがっていない。
・ターゲットは拡大・やることは同じ主たるターゲットはドイツ、フランス、ウクライナだが、その後アメリカとイスラエルが加わった。

●感想?

最近、珍しく多忙であまりまとまって整理できないんですが、私が紹介する欧米の記事やレポートはロシアや中国がやっていることを、ロシアや中国の視点では理解していない。そのため全体像が見えていないという気がする。

たとえば中国は日本のメディアを有効利用する方法を見つけつつあるような気がする。福島の汚染水はその最たる例で、日本のメディアが偏った認識で報道するものに同調して拡散すれば効果が出るし、そこに他の手法(経済制裁=海産物の輸入禁止とか)を組み合わせればさらに効果があがる。
日本に限らず世界のメディアは透明性がなく、偏った報道をしていることはプリンストン大学ESOCなどで統計的に確認されている。そして権力でありながら、選挙のような国民が信を問う機構がない。中国から見た場合、悪用し放題になりかねないリスクがありそうだ。

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Metaの四半期脅威レポート、プリンストン大学の情報戦統計は他ではあまりないかも。Metaは四半期毎なので数も多いです。 どちらも元は無償公開されているのでそちらを読んだ方がよいのは確かです。

Metaの四半期脅威レポート、プリンストン大学の情報戦統計、民主主義指数、V-Demなど定期的な資料の紹介記事。ご自分で記事を遡れば無料で…

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