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MIBUROの記事からわかるロシア情報戦のターゲットと成果

MIBUROに「A Global Tour Through Russian Propaganda」(https://miburo.substack.com/p/a-global-tour-through-russian-propaganda?r=18rop7&s=r&utm_campaign=post&utm_medium=web)という記事が掲載された。英語圏以外でのロシアのネット世論操作活動について調べた結果だ。

記事の冒頭で、ロシアは情報戦に負けたと言われているが、英語圏以外ではどうなのだろう? と書いてある。

結論から言うと、スペイン語圏とアラビア語圏で優勢である他、トルコ、ベトナムでも影響力を保っている。ロシアはプロパガンダメディアであるRTとスプートニクのスペイン語版とアラビア語版を発行する他、多くの予算を割いてきた。
これに対してドイツではロシアの影響力は当局の規制などにより大きく後退した。

最後に、英語圏ではロシアは劣勢と見られているものの、陰謀論者などのコミュニティに受け入れられており、拡散しているとしている。これは以前、noteに書いた記事と同じだ。陰謀論といってもバカにはできない影響力を持っている。アメリカ2大政党のひとつ共和党は、2021年1月のアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件を「合法的な政治的言説(legitimate political discourse)」であり、同事件を議会が調査するのは「一般市民への迫害」であると圧倒的多数で決議した。

RNC votes to condemn Cheney, Kinzinger for serving on House committee investigating Jan. 6 attack on the Capitol by pro-Trump mob(Washington Post、2022年2月3日、https://www.washingtonpost.com/nation/2022/02/03/rnc-cheney-trump/)

トランプの影響力が大きいこともあり、共和党は陰謀論や極論に汚染されていると考えた方がよさそうだ。少なくともトランプと陰謀論を否定せず、支持することが票につながると考えているのだろう。
Public Religion Research Instituteは2021年4回QAnonに関する調査を19,399人に対して行い、2022年2月24日に公開した(https://www.prri.org/research/the-persistence-of-qanon-in-the-post-trump-era-an-analysis-of-who-believes-the-conspiracies/)。
その結果によると、QAnon信者は2021年を通じてわずかだが、増加していた。
QAnon信者の割合は共和党の4人に1人(25%)に対し、無党派層(14%)、民主党の9%となった。QAnon信者は共和党を肯定的にとらえる割合が多く、民主党には否定的だった。また、極右のニュース(One America News NetworkやNewsmax)を最も信頼している共和党員の半数近く(47%)がQAnon信者で、Fox Newsを最も信頼している共和党員(26%)、TVニュースを信頼していない(26%)となっていた。

このへんは以前書いた「世界各地で同時発生した反ワクチンから親ロ発言への転換」https://note.com/ichi_twnovel/n/nce3b3fc468a7)の通りだ。「昨年の合衆国議会議事堂暴動を生んだ暴力のエコシステム」(https://note.com/ichi_twnovel/n/nc27a142b81e3)はいまも健在で強化されているのだろう。

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