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気になった論文や記事2024年4月19日

気になった論文や記事2024年4月19日資料

4月13日から4月19日の間で気になった論文や記事を簡単に紹介。なお、私が先週気づいたということであって、先週公開されたとは限りません。

●アフガニスタンで新しいファクトチェック団体ができた

アフガニスタンのメディアEtilaatrozがCIRのAfghan Witness(AW)の支援を受けてファクトチェック部門Sanjahを立ち上げた。Sanjahは、アフガニスタンの政府関係者、メディア、その他の機関や組織からの主張のファクトチェックを行うために経験豊富なジャーナリストのチームを用意したという。

Afghan media outlet Etilaatroz launch fact-checking unit as a result of Afghan Witness partnershipAfghan media outlet Etilaatroz launch fact-checking unit as a result of Afghan Witness partnership
https://www.info-res.org/post/afghan-media-outlet-etilaatroz-launch-fact-checking-unit-as-a-result-of-afghan-witness-partnership

●フェイクニュース規制法のほとんどは言論統制のために用いられている

調査のたびに同じ結論になるので取り上げなかったが、世界の国の過半数はなんらかの権威主義国家である以上、こういった調査を行えば関連法が統制や検閲を目的にしたものが多いのは当然の結果として出てくる。たまに驚く人がいるのは欧米中心の報道になれているからだろう。

Most “Fake News” Legislation Risks Doing More Harm Than Good Amid a Record Number of Elections in 2024
https://innovating.news/article/most-fake-news-legislation-risks-doing-more-harm-than-good-amid-a-record-number-of-elections-in-2024/

このnoteの最近の関連記事
78カ国105の偽情報対策法の多くは情報統制に利用されていた
https://note.com/ichi_twnovel/n/n3bc52dbaf985

●インドの選挙に合わせて拡散する陰謀論

2024年4月15日にISDは「Hindu nationalists push conspiracy theories and misinformation ahead of elections」https://www.isdglobal.org/digital_dispatches/hindu-nationalists-push-conspiracy-theories-and-misinformation-ahead-of-elections/ )を公開した。インドでは与野党ともにはげしいネット世論操作を行うことで知られており、今回もすでにさまざまな陰謀論が拡散されている。今回のレポートではインドの右派過激集団(RWE)HindutvaのX上の活動に焦点を当てている。

Hindutvaおよびインドの状況については下記を参照。

世界最大の民主主義国であるインドの右派過激集団(RWE)Hindutvaに関する初の大規模データ分析
https://note.com/ichi_twnovel/n/n6d3b653a9c8c

欧米との協力関係の陰に潜む、インドのネット世論操作の実態とは?
https://www.newsweekjapan.jp/ichida/2023/10/post-51.php

インドに関する補足
https://note.com/ichi_twnovel/n/n5207f2d1c65f

現在モスクが建っている場所から寺院を「取り戻す」主張を広げたり、「What’s wrong with India?」というタグを使って反対派を非難したりすることで、「純粋な」ヒンドゥー教の「新しい」インドを作ろうとしている。
「What’s wrong with India?」はインドと獣姦に関するバズったツイートやインドでのスペイン観光客の集団レイプの後などに使われた。
この他、おなじみのソロスに関する陰謀論、アメリカでの薬物濫用、ホームレス、警察の横暴などに焦点をあてたもの、イーロン・マスクが反インド、反ヒンドゥーでそのためにX上で反インドが広がっているという主張などがある。

背景には欧米はインド人を見下しており、イスラム教徒はインドの破壊しようとしているという思い込みがあり、インドがロシアから石油を輸入し続けていることへの批判を受けてさらに強まっているという。

●Metaが一時的にトルコでThreadsを停止

ロイターの「Meta to temporarily shut down social media platform Threads in Turkey」( https://www.reuters.com/world/middle-east/meta-temporarily-shut-down-social-media-platform-threads-turkey-2024-04-15/ )によると、Metaは4月29日からトルコでThreadsを停止すると発表した。不正競争を監督するトルコ当局からの要請に応じたもの。

●フェイクニュース化するローカル誌の現状

フェイクニュース化するローカル誌の現状をくわしく紹介している。

The ‘fake news’-ification of local news—and what to do about it
https://www.cjr.org/tow_center/the-fake-news-ification-of-local-news-and-what-to-do-about-it.php

●EUの新移民法はなんの解決ももたらさないというSoufan Centerの記事

Soufan Centerはテロの専門情報機関。EUの新移民法には数々の問題があり、人権問題になりかねないものも含まれている。記事ではこの時期に新法を可決したのはEU議会選挙をにらんでのことと推測している。移民法によって反移民を訴える極右の勢いを削ごうとした可能性だ。しかし、新移民法は人権的な問題だけでなく、ポーランドの反発を呼ぶなどかえって域内の摩擦をひどくしている。

IntelBrief: Will the EU’s New Pact on Migration Temper a Rising Far-Right?
APRIL 17, 2024

https://thesoufancenter.org/intelbrief-2024-april-17/

●今週の必読記事

これはぜひ読んでほしいです!
最近の論文や資料から見えてくるデジタル影響工作対策の問題点 偏りがあるうえ有効の検証が不十分
https://note.com/ichi_twnovel/n/nc658fc12d401

「偽・誤情報、ファクトチェック、教育啓発に関する調査研究」は日本では貴重な包括的な調査だった
誤解のないように書いておくと、この調査は貴重であり、継続してほしいと考えている。しかし、問題があるのも確かで、それを克服してゆくことでよりよいものになってゆくはずだと信じている。
https://note.com/ichi_twnovel/n/nbf6c3cc99d16

中露イランがアメリカ大統領選に対するデジタル影響工作に注力というMSのレポートはちょっとよくわからない
読んでほしいというのもあるけど、なにかを間違えたような気もしているので気づいた人は教えてほしい。
https://note.com/ichi_twnovel/n/n17d9deb7793f

●気まぐれな本の紹介

中国の本はたくさんあるけど、この本は「人」に注目して掘り下げているので、おもしろいし、立体的というかふつうの報道の平板なものが3Dで見えてくるような感じがした。習近平については戦狼へと変わっていった経緯、日本との関係では沖縄と宗教組織を狙った展開についての記述がとても参考になった。類書では読むことのできないことがけっこう書かれていた。

『戦狼中国の対日工作』(安田峰俊、文藝春秋、2023年12月15日)

紹介記事『戦狼中国の対日工作』はキーパーソンの人となりに注目した中国影響工作の参考書だった
https://note.com/ichi_twnovel/n/n2b1f6e79ddb4

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