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「ニュースメディア」が偽情報拡散の主役になった

イギリスのTheLogicallyの関係会社で、アイルランドに拠点を持つLogically Factsがイスラエルとハマスに関して、大手ニュースを始めとするニュースメディアによる偽情報の拡散や不適切な動画の掲載が悪影響を広げているという論考を公開した。
TheLogicall(https://www.logically.ai)はAIとOSINTによって安全保障、選挙、治安などに対するナラティブや脅威を分析しており、クライアントは当局および関係機関のようだ。Logically Facts(https://www.logicallyfacts.com/en/)はSNSプラットフォームをクライアントとしてファクトチェックや関連サービスを提供している。

●概要

今回の紛争が始まって以来、ニュースメディアのフライングによる偽情報の拡散が問題になっている。この論考では、病院の空爆、音楽祭、胎児の取りだし、40人の幼児の斬首などで大手メディアなどが真偽のわからない状態で記事を掲載したり、動画を紹介することによる悪影響を整理している。
状況が不確かな状態で、どちらかの視点で語ることは当然ダメだが、映像は見せるだけで分断や誤解を生む可能性が高いので慎むべきであるとしている。
そもそも適切な文脈なしに動画などの情報を拡散することは扇動と言える。こうした扇動に加担した大手メディアは経済的利益やアクセスを優先している。
また、その背景にはウクライナなどと異なり、民主主義国が一致して片方を支持しているわけではない事情もある。カオスな状況での扇動的な記事へのアクセスは増えやすい。

日本では以前から取材や裏付けを取らずに作る「こたつ記事」が問題となっており、今年3月に法政大学の藤代裕之が「ロシアのプロパガンダに加担するスポーツ紙の「こたつ記事」」(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/dfe9e8715aa9a5e48483b560213e7de369b0cbe5)で指摘していた。

●新しいメディで以外は不要

情報環境が変化した現在、過去と同じ方法論のメディアは淘汰され、消えていく。記事へのアクセスや信頼度などさまざまな指標がそれを示している。
新しいメディアを作れるのはどうやら現在のメディアやジャーナリストを自称する人々ではないようだ。

ちなみに、メディアの偏向について調査を続けているプリンストン大学ESOCの一連のレポートがある。下記は一例についての感想。

プリンストン大学ESOCによるメディアの系統的偏向の調査結果
”メディアからだけのデータから全体を再現し、行政記録と比較する検証が行われている。「“REVERSE” REPLICATIONS」と呼ばれる方法で、271の検証の結果、一致したのは81件(30%)に留まった。”
メディアが記事化している現実は公的記録が描く現実とは異なっているのだ。

おそらく核となるのは「多様な現実と多様な科学」に基づく、新しいジャーナリズムであり、メディアポリシーになると思う。それを具体的に実現するには、まだじゃっかん時間が必要だ。AGIまではいらない。ほんのちょっとAIが進化し、利用環境が整えば新しいメディアが多数生まれてくる気がする。

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