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世論はウクライナを支持するものの共和党では過剰な支援という考えが急増

以前の記事「ウクライナ1年を経て見えてきたデジタル影響工作の効果」(https://note.com/ichi_twnovel/n/n59a780cfff41)でとりあげた16のレポートからウクライナ侵攻に関する世論調査の結果をご紹介したい。

最初に概要を申しあげると、ウクライナ侵攻から1年経ってもアメリカではウクライナ支援は支持されていた。ただし、アメリカでは支持政党による差があり、共和党員は支持しない考えが急増している。また、重要な外交問題の上位5つにウクライナは入っていなかった。そしてロシアに対しては否定的、NATOに対する意見は好転という傾向があるようだ。

●2つのレポート

16のレポートの中で世論調査に関するものは2つ。Pew Researchは独自に行った調査結果の解説で、ブルッキングス研究所はギャラップなど複数の機関が行った世論調査の結果を紹介したものだ。

What public opinion surveys found in the first year of the war in Ukraine、2023年2月23日、https://www.pewresearch.org/fact-tank/2023/02/23/what-public-opinion-surveys-found-in-the-first- year-of-the-war-in-ukraine/

OneyearintotheUkrainewar ̶ WhatdoesthepublicthinkaboutAmericaninvolvementintheworld?、2023年2月23日、、https://www.brookings.edu/blog/fixgov/2023/02/23/one-year-into-the-ukraine-war-what-does-the- public-think-about-american-involvement-in-the-world/

●世論調査から見られる傾向

ブルッキングス研究所が紹介しているMorning Consult が 2023 年 1 月に発表した U.S. Foreign Policy Tracker Index 有権者が選んだ外交問題ベスト5は、1位テロ49%、2位移⺠45%、3位サイバー攻撃41%、4位麻薬取引41%、5位気候変動39%となっており、ウクライナ侵攻は24%と低かった。アメリカの有権者にとってウクライナの重要度はそれほど大きくないようだ。

その一方でウクライナへの支援には前向きだ。ギャラップ社の調査によると、ウクライナ戦争が始まって1年、アメリカ人の39%がウクライナへの支援は適切だと答え、30%が支援は十分ではないと答えている。また、多数のアメリカ人が、ウクライナへの経済援助(71%)と軍事援助(72%)の継続を支持し、ガソリンや食料の価格があがったとしても必要なだけ支援を継続する意向を持っているアメリカ人は58%もいた。
Pew Researchの調査においても2023年1月の調査では、ウクライナの支援について適正31%、支援が足りない20%となっており、ウクライナ支援については過半数が肯定的だ。
ただし、支持政党によって傾向は異なっている。共和党員はウクライナ侵攻が米国にとって大きな脅威であると考えないようになってきており、ウクライナに過剰な支援をしていると考える傾向が強くなってきている。過剰な支援をしていると考える共和党員の割合は、2022年3月の9%、2022年5月17%、2022年9月32%、2023年1月40%と増加した。

NATOのイメージが好転したことがPew Researchの調査およびブルッキングス研究所で紹介されているシカゴ評議会の調査でわかった。

Pew Researchの調査によると、2022 年に調査した多くの国で、プーチンに対する信頼度が過去最低になった。また、ロシアを非常に好ましくないとするアメリカ人の割合は急増しており、2020年に41%だったものが2022年3月には69%に上昇した。

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