『総員玉砕せよ! 新装完全版』(水木しげる)を読んで平坦な戦場を思う
水木しげるを妖怪マンガで知っている人は多いと思うが、戦記ものや寓話の短編の名手でもあった。『総員玉砕せよ! 新装完全版』(講談社、2022年7月15日、水木しげる)は戦記もののひとつであり、本人の体験がもとになっている。
そのためリアルでどうしようもなくふつうの人間ばかりが登場する。人工的な感動やご立派な人物は登場しない。
徴兵され、戦地に送り込まれ、生きて帰れると思うなと言われ、玉砕を命令される。わけもなく殴られ、日常的に人が死ぬ。生きてどうにかなる希望はないが、かといっ