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【レビュー】『蒼のファンファーレ』

ほとんど本を読んでこなかった人間がポツポツ読書を始めました。
そんな人間によるレビューです。カナリ個人的で的外れな内容もあるかと思いますので、その点ははじめにお断りしておきたいと思います…。
(読書記録も兼ねている為、ネタバレを含みます。お気をつけ下さい)


『蒼のファンファーレ』
古内 一絵 著 小学館 2017/7/21


●この本について(あらすじ)

爽やかな涙を呼ぶスポーツエンタメ決定版!と書かれていた通り

 舞台は廃業寸前だった地方競馬の緑川厩舎。
芦原瑞穂という女性騎手を始めとする緑川厩舎の個性的な面々が再びG1を目指す話。

ある日、緑川厩舎に超良血馬がやってくる。馬主は有名な風水師。
その男と良血馬に振り回される面々。
問題もたくさん起こるが、それらを経る度に緑川厩舎メンバー内の結束はどんどん強まっていく。

そして芦原瑞穂はついに相棒の馬(フィッシュアイズ)と再び、G1に出場することに。
しかしそこにはメンバー達の因縁の相手が何人も登場し、出走の直前までメンバーの心を掻き乱す…!
勝敗の結果はいかに!

●レビュー

★★★★★(星5つ)
オーディオブックで散歩や家事をしながら聞いた本。
この著者の本は初めて読んだ。
今回の評価は星5つ!

いやぁ面白かったぁ!
読み始めに「競馬の話か…分かるかな?」と心配していたけれど、詳しく知らない私でも十分楽しめた。
人間(と馬)の成長物語であり、物語終盤で迎える大舞台のG1では本当に手に汗握って…という感じだった。
文章は読みやすかったし、描写も状況がよく想像できた。

競馬という私にとっては未知の世界を見せてくれたこと、ハッピーエンドだったこと、終盤での伏線回収にやられた(いい意味で)ことなどから星5つとさせてもらった。

●真似したい点

・登場人物の感情や行動、状況のリアルさ
・声優さん達の迫真の演技
・登場人物達のカッコ良さ(かにじぃとか)
・伏線回収

●う〜んな点

・今回はG1再挑戦になるのだが、初めの挑戦に関しては少ししか書かれておらず、話のキーポイントである主人公の置かれた状況を理解するのに、競馬に疎い私は少し時間がかかった
→話の中で分かってきたのでそこまで大きな問題ではなかった

●感想・気付き

これまた一気に読み(聞き)切ってしまった。
面白かったし、結末が気になったし、見事に引き込まれてしまった。
登場人物の全てにドラマがあり、それがどんどん繋がっていくラストは、競馬の疾走感だけではなく物語をよくしている要素だと思った。本当に気持ちが良かった。

私が一番泣いてしまったのは、ラストのG1での誠のナイスプレーだ。G1前に発生した、かにじぃとの事件があってこそのこのシーンだと思うのだけれど、その時点で既にかなり心打たれていたが、涙は我慢していた。
なのに、ここにきてそのシーンあってこそのこのナイスプレーを出すなんて!もう涙は我慢出来なかった。思わず誠、頑張れ!って応援してしまった。

そこに感じた家族以上の温かさ、男同士のやり取りに、いいなぁと思った。
今の時代、男だの女だの言ったら怒られてしまうだろうけれど…私は女性蔑視の感覚がわかる世代だ(実際に体験・経験してる)し、そういう状況で生きてきたからすぐにはこの感覚は変えられない…。
しかし、男の人同士、女の人同士ならではの関わり方というものも少なからずあると思っている。
それは考え方の傾向だったり、美徳や好みを感じる基準の小さな差だったりという点で、当人達の性格や育った環境なども大きく起因している話だとは思うのだが。

だけれど、そういう性差の感覚が改善された今の子供達の世代には、もしかしたら分からないシーンが多いのかもなぁとも思った。特にラストの瑞穂達の抱き合っての号泣シーンは分からないかもしれない。と思うと、この本の良さが減ってしまう気がして、少し残念な気持ちになった。
若い世代の方には、そういう時代もあった・場所によっては未だにそういう環境があると知った上で、ラストのこれだけの涙になっているということを少し大袈裟なくらいに重いことと想像して読んでみてほしいと思う。

この本には色々なテーマが色々な形で盛り込まれているので、お気に入りのシーンが人それぞれでも全く異なる場所でも違和感はないし納得できる。
ここまでいろんな人の心の中を覗ける作品もそうないのではないかと思った。
良い本に出会ったと思う。

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