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早花まこ「すみれの花、また咲く頃 タカラジェンヌのセカンドキャリア」

・本書は、元宝塚歌劇団娘役で、劇団の機関誌のコーナー執筆を8年にわたって務め、鋭くも愛のある観察眼と豊かな文章表現でファンの人気を集めた著者が、トップスターから専科生まで、9人の元タカラジェンヌの方々に取材し、当時の裏話や、卒業後の彼女たちのその後などのエピソードをまとめた1冊。

・宝塚歌劇団は、創設から100年以上の歴史を持つ劇団。入団できるのは宝塚音楽学校の卒業生だけなので、全国から志望者が集まるも、合格倍率は、平均して約23倍という「狭き門」である。
・本書では、宝塚歌劇団退団後、
◇俳優、モデル
◇会社員
◇大学生
◇振付師
◇ハワイ島へ移住
◇3児の母
など、さまざまなキャリアへ進んだ9人の元タカラジェンヌエピソードが収録されている。

・私が気になったうちのひとりは、「香綾しずる」さんという方だ。香陵さんは、2002年に宝塚音楽学校に入学し、第90期生として2004年に雪組公演「スサノオ」「タカラヅカ・グローリー!」で初舞台を踏み、そのまま雪組に配属されてからは、確かな実力のある男役として活躍し、新人公演の主役を経験する。
・入団から14年、人生の節目に新しいことを始めないと考えていた彼女は、2017年に宝塚歌劇団を退団し、その後は、ベトナムの日本語学校で講師を約1年間勤め、現在は日本アジア青年交流協会にて、外国人実習生が日本の技術、様々な分野の知識を学んで母国ベトナムへと持ち帰り、社会の発展や生活の向上を支える人材となるよう育成する、という仕事をしている。
・香陵さんが在籍していた当時の宝塚音楽学校では、「窓枠の埃を、筆で払う」「ピアノの鍵盤を磨くのは、綿棒」と掃除が徹底的に厳しいことで有名だった。この掃除の経験が、ベトナムの日本語学校にて、隅々まで完璧に掃除をするための指導の助けになったそう。
・また、香陵さんは掃除だけでなく、挨拶の仕方や整理整頓、団体行動といった生活全般の指導には、宝塚で学んだことが大いに役立ったそう。
※香陵さんのベトナムでの仕事や生活について、宝塚歌劇団在籍中の印象に残っているエピソードについても語られているが、詳細は本書をお読みください。

香陵さんのエピソードで驚いたのは、退団後、宝塚で得た経験を演劇や歌に活かすのではなく、全く業界の違う世界に転身したことである。
人によっては、「もったいない」と思うかもしれない。しかし、香陵さんは退団後のベトナム生活を楽しく過ごしている。そして、新たな日々を送っているのだ。
香陵さんに限らず、大学に入学し医療の道へ足を踏み入れた鳳真由さん、退団後にハワイに移住を決意した美城れんさん、3児の母となり育児に奮闘する夢乃聖夏さんなど、退団後に全く違う世界に進む方々が本書で紹介されている。
進む道は違うが、彼女たちに共通しているのは、「宝塚で学んだことを活かしている」ということ、そして、「今の人生を楽しんでいる」ことだ。

著者の「あなたにとって宝塚とはどんな場所だったのか」という質問に対し、9人の元タカラジェンヌは、
◇生活必需品(ゆりかご前)
◇生まれた場所、死にたい場所
◇全て
など、さまざまな答えが返ってきた。
誰が、なぜこの答えを言ったのかについては、本書をお読みください。

一度、人生で挫折を経験された方、これからのセカンドキャリアを考えたい方は、次の人生を変えるきっかけになるかもしれませんので、ご興味ある方はご一読くださいませ。

本書の「おわりに」に、著者の早花まこさんが、「今日を生きる誰かの、そして明日は立ち向かう誰かの力となりますように」と書かれています。

>早花まこさん
読み終えたあと、私が「明日は立ち向かう力」を得れたことは間違いありません。
本書を世に出していただいたことに感謝申し上げます。

私のこのご紹介を読んで、「すみれの花、また咲く頃 タカラジェンヌのセカンドキャリア」にご興味を持ち、手に取る方々が増え、人生が前進する方々が増えたら幸いです。

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