テルコになれない自分が「愛がなんだ」を見た感想
昨日は安く映画を見られる日だったから、ここぞとばかりに「愛がなんだ」を見た。感じたこと考えたことをTwitterじゃ表現しきれなかったから、その感想を書くぞ。
結末とか大きなネタバレはしてませんが、見た人後のほうがおもしろく読んでもらえるかなと思います!
テルコに共感できる人、できない人
どんなに優しくなくても、かっこ悪くても、振り回されても、マモちゃんを好きでいることをやめないテルコ。
Twitterで他の人の感想を見ていたら、そんな彼女に対して「共感できすぎる」という声もあれば「全然共感できなかった」というのもあった。
わたし個人としては、テルコ全面共感することはできなかった。「好きに理由なんている?」って気持ちはわかるけど、でも、客観的に見たらやっぱりやりすぎだし、空回ってるし……。もしわたしがテルコの友達だったら、「そんなおれさま男やめときなよ」という葉子と似たことを言うかもな、と思った。
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全面共感はできなかったけれど、テルコを見ていて、心の奥底に刺さるようなシーンは度々あった。居酒屋さんで「山田さん、飲みすぎるとぐずって帰らないんだもん」という言葉に傷ついた顔をしたと思ったら、タクシーに乗り込む寸前のマモちゃんに「うちくる?」と言われて見せた嬉しそうな顔とか。ベッドの上ですごく勇気を出して言ったであろう「私でいいじゃん」とか。
そんな場面では「前に自分も体験した」と思ってしまうような気持ちが呼びおこされて、その瞬間だけは、自分がテルコになったみたいに傷ついたり切なくなったりした。本当にそんな体験をしたことがあるのか曖昧だけど、でも似たような気持ちは知っていた。
わたし以上にテルコに似た恋愛や気持ちを経験してきた人なら、テルコとマモちゃんが「自分と心にいるあの人」を思い起こさせて、ものすごい共感ができたのかもしれない。
考えてみれば、わたしはテルコのように恋愛に突っ走ることは到底できない。
盲目的な恋愛に憧れる
恋愛のことになると、人は自分を客観視するのが一気に難しくなるように思う。他人のことなら「これじゃ〇〇がかわいそうだよ」とか言えるのに、自分の恋愛になったとたん盲目になってしまう人は、少なくないんじゃないか。
テルコもそうで、友達の葉子のアドバイスは全然聞き入れない。どんなことがあっても、自分のことを全然大切にしてくれないマモちゃんをずっと好きでいる。
彼の引き出しの靴下を整理すれば、マモちゃんにぐちゃぐちゃにされ、買ってきた二人用の鍋を持ち帰らされ……。身勝手で一方的な愛は、そんなことじゃへこたれない。
葉子と曖昧な関係でいる仲原くんに「俺よりもキモいっすよ」言われるテルコの歪んだ愛は、矛盾するようだけど、まっすぐだ。どこまでも客観視から遠ざかっていくようなまっすぐさがある。
でも、そんな盲目的な恋も悪くない。というのを、テルコは見せてくれる。
恋は盲目とはいえ、実らない片思いの最後には、「自分じゃ届かないからあきらめよう」とか「好きになるのをやめよう」とか、自分の気持ちから一歩も二歩と遠ざかって、ふと自分を客観視する瞬間が訪れるように思う。みんながみんなではないけれど、そんな片思いの終息はありがちだ。
でも、テルコの愛はそれを知らない。はたから見れば「不気味ちゃん」で「キモイ」のだとしても、そのまっすぐさをずっと失わないことが、うらやましくも思えてくる。
少なくともわたしは、「うらやましい」と思った。
テルコになれないわたし
「愛がなんだ」を見ているとき、テルコになれないわたしは、気づけば「やめときなよ」という友達の葉子か、「うらやましい」というテルコの会社の後輩の立場で彼女を見ていた。
別に盲目的な恋愛をしなくても生きていけるし、必ずしもする必要はないのはわかってる。でも、自分ができないがゆえか、テルコの風変わりでかっこ悪くて、でもどうしようもない「好き」 は愛おしくて、それを見せてくれる作品があるのはありがたいな、と思った。それに、いろんな人の気持ちをすくい上げてる気がする。
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わたしはこの映画を見て泣かなかったけど、映画館では泣いている人の気配があった。涙を流していた人は、今、もしくはかつてこの映画を見せたいような見せたくないような「誰か」がいたりするのかな、と思った。
逆に、男女ふたりで見にきているお客さんもたくさんいて、ふたりは映画はどんな風に感想を言い合うんだろうとか、それともお互い映画の感想は言わずにとどめておくのかな、なんて気になってしまった。
テルコにはテルコの、マモちゃんにはマモちゃんの、仲原くんには仲原くんの恋愛があるみたいに、きっと映画館にいたお客さんにもそれぞれの恋愛があって、そんな話を聞きたくなった。
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