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自分の名前について

わたしはTwitterやnoteのアカウントの名前を、本名のひらがな表記にしている。ペンネームを使わず本名にしたのは、自分自身で勝負したいと思ったのと、憧れの大森靖子さんも本名で活動してるし、という単純なものだった。ひらがな表記にした理由も単純で、みうらじゅんさんが好きだから。みうらさんがひらがな表記にしたのも、吉田拓郎さんが前に「よしだたくろう」名義で活動していたからというのを何かで読んだことがあるから、憧れの人の憧れの人から勝手に引き継いでいることになる。

それにしても、ひらがなで書く「みうらじゅん」の美しさたるや。三浦純って漢字で書いてもカッコイイのだけど、もうすっかり世に定着した「みうらじゅん」は、響きも文字の並びもいいなあ、素敵だなあと思う。苗字と名前のつなぎ目がなくなって、ひとつとして完成してるみたいだ。例え同じ氏名の人がいても、ひらがなで書くみうらじゅんは彼だけ。そう確信してしまうほどのオリジナリティが、この名前にはある。

わたしはというと、苗字と名前をひらがなで並べたときのバランスが、いまいちに思える。いちかわも、あかねも、それぞれ単体で見るとかわいらしい気がするのに。いちかわは、ちいかわみたいだし(?)、あかねも、自分で言うのもあれだけど、なかなかいい名前だと思う。なのに、2つのひらがなを組み合わせてフルネームにすると、どうしてもしっくりこない。響きも、文字の並びも。今度は苗字を漢字に、名前をひらがなにしてみても、うーん……、やっぱりいまいち。

母によれば、わたしの名前の由来は「らんま1/2に出てくるあかねちゃんが可愛かったから。それに、素直でいい子だなぁと思って」ということらしい。切迫流産の兆しがあった母は当時、病院のベットで『らんま1/2』を読み耽っていたのだった。それに画数を考慮して、ひらがなではなく漢字の名前にしたそうだ。

でも、小さい頃に聞いた名前の由来は違っていた。初めて由来を聞いたのは、小学生の頃。自分の名前の由来を発表するという授業のためだった。どんな答えが返ってくるんだろうとドキドキしながら訊ねると、「茜草(根っこが茜色の染料になる草)みたいに、すくすく育ってもらいたいという願いを込めたんだよ」と言われた。わたしは長らくこの話を信じていて、発案のきっかけが漫画のヒロインに由来することを知ったのは、ずいぶん大きくなってからだった。何気ない会話でそれを知って、「そんなわかりやすい理由だったのか」と笑ってしまった。茜という植物についての話も嘘ではないし、天道あかねちゃんも嫌いじゃないし、別にいいのだけど。

そんな自分の名前を、好きになれた瞬間があった。デンマークに滞在していた21歳か22歳の夏ごろ。学校のちょっとしたイベントで、小さなカップケーキをそれぞれデコレーションをしていたときのことだった。近くに座っていたデンマーク人の男の子となぜか名前の話になり、「そういえば、日本人の名前には意味があるって聞いたよ。あかねはどんな意味なの?」と訊かれた。「草とか花の名前で、布とかに使うと夕焼けみたいな色になるんだって」と拙い英語で伝えると、その男の子は「夕焼け!すごくいい名前だね!」と大層感動してくれた。その数日後も、彼はわたしに「サンセットガールだね」と言ってくれた。彼のなかでは植物の話はすっ飛ばして、わたし名前=サンセットになってしまったのかもしれない。

名前の由来を話しながら、「サンセットガールだね」という言葉を聞きながら、わたしは美しい夕焼け空を思い浮かべていた。見たことあるのか妄想なのかはわからないけど、赤とオレンジのグラデーションが美しく揺らめくような茜色の空。その日のことを思い出すと、自分の名前が少し愛おしくなる。

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